『いつ空いてる?』
柔太朗からのLINEに、少しだけ画面を見返す。
『金曜の夜なら』
そう返すと、すぐ既読がついて、
『じゃあその日ね』
それだけで決まるのが、なんか柔太朗っぽいと思った。
当日までのやりとりは、少しだけ増えた。
前よりちゃんと会話になってる時間があって、それだけで少し気分が軽くなる。
金曜日。
仕事を終えて、そのまま店に向かう。
朝から何回も服を選び直した自分を思い出して、小さくため息をつく。
ただ飲むだけ。
そう言い聞かせてるのに、いつもよりちゃんとしてるのは分かってる。
店に入って、個室に案内される。
先に座って、スマホを見る。
『ついた』
送ると、すぐに既読がつく。
そう思って、テーブルの上のメニューをなんとなく開く。
5分
まだ来ない。
10分
ドアは開かないまま。
スマホを見るけど、連絡は来ていない。
30分
仕事、長引いてるのかな。
それとも、急に来れなくなったとか。
そう思った瞬間、少しだけ気持ちが下がる。
40分くらい経った頃。
コンコン、と軽くノックの音。
ドアが開く。
柔太朗だった。
少し息を切らしてて、髪も少し乱れてる。
そう言いながら、向かいに座る。
完全に許してる言い方になってるのが、ちょっと悔しい。
即答すると、少しだけ笑われる。
そう言いながらも、少しだけ視線を逸らす。
柔太朗が、じっとこっちを見る。
とりあえずそう返す。
少し困る。
一瞬、視線がぶつかる。
それだけ言って、メニューを開く。
なにそれ。
さっきまでの40分とか、全部どうでも良くなるくらい。
直視できない。直視したら本当に好きになっちゃうから。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!