今日は珍しく劇を見に行くらしい。
主演はかの有名なフリーナ・ドゥ・フォンテーヌ。
元水神のフリーナ様だ。
私はこの劇を見る前に1度彼女に会った事がある。
観劇を含めるのであれば2回。
2人で劇を見に行くのは今回が初めて。
1度目の事をペルヴィに言ったことは無い。
怒るのが目に見えているから。
それに、当時一緒に行った同僚はもう居ない。
歌劇場はいつも以上に賑わっていた。
流石国民的大スター。
その人の多さに関心してたら後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
昨日リボンを選ばされたのはこれか〜と思いながら、
その場を離れる。
フリーナ様の新作の初演ということもあり、集まってきた人の中には記者も居る。
それに便乗して芸を見せる無名のマジシャンも居れば、演奏をする吟遊詩人も居る。
…そして熱狂的で周りの見えないファンも居る。
…まあ人が多いから仕方ないとも言える。
なんとかペルヴィを宥めて歌劇場に入る。
そこでようやく足が痛いことに気づいた。
捻ったとかそういうわけでは無い。
…靴擦れかな?
そんなこんなで席に着く。
リネット達の入場を見守り、劇が始まるのを待っていた。
特に話すこともなく、暗い舞台を眺める。
…あそこに立つことのできるような人生はどんなだろうか。
もしあそこに立つような人生だったらどのような人と知り合っていたのだろう。
ペルヴィとクリーヴには出会えていたのかな?
なんて、ぼーと考えてると、
そんな他愛ない会話をする。
気づけば舞台の暗闇は周りを飲み込んだ。
その舞台を見れば見るほど、
引き摺り込まれる魅力がたしかに存在する。
それを実感しながら、2人でこの空気に酔うのも悪くないなと思う。
そう言って席から立った瞬間に先ほどの痛みが蘇る。
一周回って裸足で歩きたいな…なんていう気持ちを抑えて歩く。
少し歩けば街灯に照らされた人のいないベンチがあった。
そう呆れつつも絆創膏をつけてくれるところが好き。
靴を片手に手を繋いで歩く道は悪くない。
潮風が少し冷たいような気はするが、芯まで冷え切るほどではない。
こうは言ってるが、5分もすればしゃがんでなにかしているはずだ。
…今回の劇は確かに素晴らしかった。
文句のつけどころは無い。
確かに楽しめた。
あなたも楽しそうに微笑んでいた。
コロコロと表情の変わるあなたは面白かった。
それでも私は2人きりの彼女の方が好きだ。
飾らない、ありのままの彼女のほうがいい。
これからは月に一度くらいの頻度で外に出よう。
そうすれば彼女も喜ぶだろう。
…ああ出る前にはちゃんと跡をつけておかないとだな。
…あと指の付け根も…。
…たまにはこんな日も悪くないだろう。
番外編
今日はペルヴィの誕生日。
子供達が用意したカードに花を付け足して旅人に託した。
窓から見た景色はみな幸せそうに笑っていた。
目を離した隙に主役が消えたと思えば、
そう言ってポケットからブレスレットを取り出す。
…これなら流石に誰もぺルヴィを狙わないだろう。
自分から見てもあからさまだもん。
…みんなのお父様であるペルヴィが好きなはずなのに、
その姿を見て嫉妬してしまう。
矛盾しているのに否定できない。
でも、今この瞬間は私のペルヴィだ。
自然体の飾らない、私のことが大好きなペルヴィ。
…私だけのペルヴィだ。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。