第76話

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2024/04/14 09:00





及川 徹
及川 徹
俺が今まであなたちゃんにしてきたことは全部、俺がしたくてやってきた自己満なんだよ。
媛煌 あなた
……っ、!



  私の右手首を掴んでいる手に
  徐々に力が入ってくる。


及川 徹
及川 徹
なんだかあなたちゃんを見てると、ほっておけないんだよね。
及川 徹
及川 徹
いつも俺たちの為にいっぱい動き回ってくれてるけど、ホントはちょっとだけ無理してるの何となく知ってたし。
及川 徹
及川 徹
それにさっきみたいに暴力振るわれちゃってるしさ…だから、俺があなたちゃんのこと守らなきゃって思うんだ。
及川 徹
及川 徹
あなたちゃん俺に言ったよね。自分を大切にしてって。だからあなたちゃんも自分をもっと大切にして?



  なんで、、


媛煌 あなた
なんで、そこまで私のこと……
及川 徹
及川 徹
俺の中であなたちゃんは大切な存在だから。



  彼女さんの気持ちを考えると
  この言葉に喜んでいいのかだめなのか
  分からなくなる。


  でもそんな面倒臭い思考を
  知らない体は正直だ。


  目の奥が熱くなって
  すぐに涙が溢れ出てくる。


媛煌 あなた
…じゃあ、彼女さんは?
及川 徹
及川 徹
茉莉奈も、もちろん大切だよ。



  そんな徹くんの大切な人を
  私は傷付けてしまった。


  徹くんの言葉が、重く心にのしかかって来る。


媛煌 あなた
、ごめんなさい……



  頬を濡らし続ける水滴を
  徹くんの優しい指が拭ってくれる。


及川 徹
及川 徹
ほらほら、泣かないの…俺が泣かしてるみたいじゃん、。



  それからその日は
  徹くんに慰められながら家に帰った。


  家に帰ってからの記憶はほとんど無い。


  きっと、それくらい放心していたのだろう。


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