力なくへらっと笑う茉莉奈さん。
その横顔が何だかすごく切なくて
無意識に私の胸が締め付けられていた。
最後に付け足された泣いてまでという
言葉が、何故か胸に引っかかる。
茉莉奈さんはこの話を徹くんから
聞いた時、どう思ったんだろう。
実際、あの件は徹くんの心に干渉
しすぎたと反省している。
だがこれは次の茉莉奈さんの
言葉によって打ち壊される。
涙が薄らと浮かんでいる茉莉奈さん。
その姿を見ると勝手に体が動いていた。
茉莉奈さんの白い手を握る。
_ 爪を見れば分かる。
この人がどれだけ本気でバレーに
向き合ってきたか。
しっかりと手入れがされている。
皮膚は普通の女子よりも少し固くなっている。
ボールを打ち続けているなによりの証拠だ。
そんな茉莉奈さんの手を
そっと優しく、割れ物を扱うように握った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。