あなたside
その場に着いた時、真っ先に上を見あげた。
私の真上、そこにはさっきの屋上がある。
軽やかな音楽が聞こえ、光輝先輩たちの掛け声が響き渡っていた。
さっき身を乗り出していたのはこの当たり…。
花が咲く花壇に手を突っ込む。
でも、そんな簡単に見つかるはずがなかった。
急な声に、びっくりして振り返る。
そこには竜先輩の姿があった。
本当のことを言うか迷っていると、竜先輩は何も言わずに花壇に手を突っ込んだ。
なんでだろ…。
急に視界が滲む。
目からこぼれるものは、自分では止められなかった。
『王子』だから?私とは違う人だから?
だから、優しくされるとこんな気持ちになるの?
私の失くしたもの、ペンダント。
それは特殊なダイヤでできていて、とても価値のあるものだとお父さんから教えてもらった。
涙を拭いとり、わたしもペンダントを探す。
30分後
空も赤くなり、日も沈もうとしていた。
花壇だけでなく、その周辺もくまなく探したが、結局見つからなかった。
私は竜先輩の悲しそうな顔を見て、作り笑いを浮かべる。
竜先輩は私に、右手の小指を向けてくる。
竜先輩の意外な一言に思わず笑みがこぼれる。
「ゆびきりげんまん、嘘ついたら針千本のます。」
子供が良くする、約束の形が今の私にとって、とても素敵なことに思えた。
私の左手の小指には、まだぬくもりが残っていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!