第8話

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2020/03/13 15:26
あなたside
その場に着いた時、真っ先に上を見あげた。
私の真上、そこにはさっきの屋上がある。
軽やかな音楽が聞こえ、光輝先輩たちの掛け声が響き渡っていた。
さっき身を乗り出していたのはこの当たり…。

花が咲く花壇に手を突っ込む。
でも、そんな簡単に見つかるはずがなかった。
京極竜
京極竜
そこで何してんだ?
急な声に、びっくりして振り返る。
そこには竜先輩の姿があった。
椎野(なまえ)
椎野あなた
えっ、えっーと…。
本当のことを言うか迷っていると、竜先輩は何も言わずに花壇に手を突っ込んだ。
椎野(なまえ)
椎野あなた
っ!何してるんですか、
京極竜
京極竜
捜し物あんだろ?一緒に探してやるよ。
椎野(なまえ)
椎野あなた
…っ、
なんでだろ…。
急に視界が滲む。
目からこぼれるものは、自分では止められなかった。
京極竜
京極竜
あなた…。
『王子』だから?私とは違う人だから?

だから、優しくされるとこんな気持ちになるの?

椎野(なまえ)
椎野あなた
私の、大事なものなんです。
母が私に唯一残してくれた形見なんです…。
京極竜
京極竜
…だったら必ず見つけないとな。
私の失くしたもの、ペンダント。
それは特殊なダイヤでできていて、とても価値のあるものだとお父さんから教えてもらった。
涙を拭いとり、わたしもペンダントを探す。
30分後
空も赤くなり、日も沈もうとしていた。
京極竜
京極竜
…ないな。
花壇だけでなく、その周辺もくまなく探したが、結局見つからなかった。
椎野(なまえ)
椎野あなた
…大丈夫です!ここに落としたという根拠なんかなかったし、きっとすぐ見つかります!
私は竜先輩の悲しそうな顔を見て、作り笑いを浮かべる。
京極竜
京極竜
とりあえず、俺が必ず見つけるから。
椎野(なまえ)
椎野あなた
すみません、なんか…。
私も出来るだけ、色んなところ見て探します。
京極竜
京極竜
ん。
椎野(なまえ)
椎野あなた
…?
竜先輩は私に、右手の小指を向けてくる。
京極竜
京極竜
こーいう時はゆびきりだろ。
椎野(なまえ)
椎野あなた
…ふふっ、
竜先輩の意外な一言に思わず笑みがこぼれる。
京極竜
京極竜
何笑ってんだよ、早く。
椎野(なまえ)
椎野あなた
はい。
「ゆびきりげんまん、嘘ついたら針千本のます。」
子供が良くする、約束の形が今の私にとって、とても素敵なことに思えた。
京極竜
京極竜
約束だ。必ず見つける。
椎野(なまえ)
椎野あなた
約束…。
私の左手の小指には、まだぬくもりが残っていた。

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