秋の風が、
ふとした瞬間に冷たさを
帯びるようになってきた。
朝、少しだけ薄紅色に
色づき始めた庭の木々を眺めながら、
僕は静かに息を吐く。
ジョングクは、まだ寝ている。
いや、本当はもう
目覚めているのかもしれない。
いつからか、彼は僕よりも
早く起きるようになったけれど、
それでも最近は、
僕の動きを感じるとわざとらしく
寝息を立てているのがわかる。
たぶん……
僕を気遣ってくれているんだ。
無理に起こさないように。
無理に背中を押さないように。
身体の調子が、
本当に“戻らない”。
ただの疲れか、
季節の変わり目のせいだと
自分に言い聞かせていた。
けれど、ふとした瞬間に
足元が揺れるような感覚がある。
立ち上がるだけで、
まるで空気が歪むような眩暈に襲われる。
そして、時折、
頭の奥から響くような痛みが___
鋭く、重く、刺してくる。
でも……それを、言えない。
テリンやジョンウン、リンファにも、
そして……ジョングクにも。
僕が顔を顰めれば、
あの人はすぐに気づいてしまう。
優しさの手が、真っ直ぐに
僕へと伸びてきてしまうから。
僕が苦しめば、きっと彼は、
自分の心臓を差し出してでも
僕を助けようとする。
呟いた言葉が、
自分でもあまりに弱々しくて、
思わず苦笑いがこぼれた。
それでも___僕は、笑わなきゃ。
何よりも、あの人の前では、
ちゃんと立っていたいんだ。
家族の、子どもたちの、
そして___ジョングクの“光”でいたい。
***
朝食の準備をしていると、
いつの間にか背後に
気配があって、
温かい声がかかった。
振り返れば、
ジョングクが心配そうに
僕を見つめていた。
……ほらね、
やっぱり気づいてる。
笑ってごまかそうとしたけれど、
ジョングクの目は鋭かった。
それでも何も言わず、
彼は僕の頬に手を添えて、
そっと額を寄せてきた。
言葉の先は、飲み込まれた。
そのかわりに彼の指が、
静かに僕の髪を撫でる。
その手のひらの温かさが、
僕の胸に深く、
優しく沁み込んでいく。
怖かった。
何が、じゃない。
今この時間が___
この幸せが、
もし壊れてしまうとしたら、
それが怖い。
僕の声が震えた。
そう言った僕に、
彼は笑って、
何も言わずにキスをくれた。
言葉はいらなかった。
ただ唇が重なる、
その温もりが、
何よりの返事だった。
***
夜。
部屋の灯りを落とし、
テリンとジョンウン、
そしてリンファの寝息が
遠く聞こえる頃。
僕とジョングクは、
並んで布団に入っていた。
それぞれの温度が
交わる静かな時間。
やっぱり……
見てたんだ。
彼は優しい声で、
けれど強く、言い切った。
言い返せなかった。
どれだけ隠しても、
この人の目は、
僕をすべて見抜いてくる。
僕がそう呟くと、
彼は無言で僕を抱き寄せた。
背中にまわされた腕が、
ぎゅうっと、僕を離さない。
耳元で、
静かに囁かれる。
その言葉に、
心の奥が温かくなった。
僕は、泣きたくなって、
けど泣きたくなかった。
うん。
僕も、そう思ってる。
けど__
この身体が、どこまで持つのか、
わからない。
いつかこの腕が、この心が、
壊れてしまったら。
それでも……
一緒に、いられるのだろうか。
そんな不安を、言葉にするには、
あまりにも今の時間が優しすぎた。
だから僕は、
ただ、彼の胸の中で目を閉じた。
そして、思ったんだ。
“もっともっと、君と生きたい。”
そう、強く___深く___願った。















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。