その日は、最初から少しだけ噛み合ってなかった。
朝、目が合っても
りうらくんはすぐ逸らすし、
消しゴムを拾ってもくれなかった。
昼休み。
友達と話していると、
別のクラスの男子に声をかけられた。
それだけ。
本当にそれだけなのに――
視線を感じた。
りうらくんが、
少し離れたところからこっちを見てる。
目が合った瞬間、
なぜか、冷たい顔をされた。
放課後。
勇気を出して、屋上前で声をかける。
短く、それだけ言われて、
胸がぎゅっと痛んだ。
彼は立ち止まって、振り返る。
その言い方に、
思わず感情が溢れた。
一瞬、沈黙。
低くて、抑えた声。
その言葉に、
今度は私の胸がきゅっと締まる。
りうらくんは拳を握って、目を伏せた。
その一言が、
怒りじゃなくて、
不安から来てるって分かってしまった。
私が言うと、
彼はゆっくり顔を上げた。
一歩、近づいて。
その距離で、
りうらくんは小さく息を吐いた。
初めて聞く、弱い声。
少しの沈黙のあと、
彼はそっと手を伸ばしてきた。
そう言って、
私の手を強く握る。
その言葉に、
全部許してしまいそうになる。
私がそう言うと、
りうらくんは照れたように笑った。
夕焼けの中、
手を繋いだまま、少し長く立ち止まった。
さっきまでの不安が、
全部、あたたかさに変わっていく。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。