[宮舘side]
俺は飛び付いてきたラウールの頭をよしよしと撫でる。
ラウールはずびずびと鼻をすすっている。
今までが相当悔しくて、今回のが嬉しかったんだろう。
ラウールの顔が近付いてきて、唇が重なる。
いつの間にか歩けるようになっていた梨良が俺たちを見上げていた。
きゃははと笑って、三紅ちゃん達のところへ走り去っていく。
意地悪な子…!
最近梨良も性格がラウールまっしぐらで怖いよ…
大阪に本社があるとは知らなかったな。
しかも研修…遠…
[数日後]
がしっと俺にしがみつくラウール。
一輝くんは2歳なのによく口が回る…
関西人(産まれ関東)は成長が早いのかな…
これからラウールは朝早くなって、夜遅くなって…
いってらっしゃい、いってきますが当たり前になるんだな。
俺見送るのって好きじゃないの。
なんだかもう会えなくなっちゃうような気がしてさ。
それだけ言って、三紅ちゃんはとてて…とリビングに帰っていってしまった。
ラウールは…ずっと一緒…
妙に説得力がある。
大丈夫、帰ってくるもんね。
2人がドアを開けて元気に出勤。
隣でふっかがため息を吐いた。
なんだ、ふっかも同じこと考えてる…
お前もか、と目をぱちくりさせるふっか。
哀しそうに天を仰ぐふっかに、俺は声をかける術もなかった。
急に泣き出しちゃったふっかの肩を抱く。
でも甘ったれちゃいけないっていうのもある。
寂しくなるのは、独りじゃないからなんだと俺は思う。
でもふっかの涙が意味を持ってるなんて、その時は気付けなかった。
あの後ふっかが泣き止むまで時間がかかっちゃって、俺はふっかを持ってリビングへ。
そしたらふっかがおもむろに口を開いたんだ。
小学校高学年くらいの時の話だ。
家族ぐるみで仲が良かったから、俺もお葬式に参列した記憶がある。
ふっかのお母さんは専業主婦だったんだけど、その日は買い物に出ていって帰ってこなかったそう。
不審に思っていたら家に病院から電話がかかってきて、亡くなったことを知った。
お父さんも家にいることが少なくて、1人だったふっかは、パニックになって岩本家へダッシュ。
俺らもそこで知った、って感じ。
見送った後から帰ってこなかった記憶が蘇り、トラウマになってしまったらしい。
俺も同じ立場ならそう思う。
にかっと笑うふっかの目から涙は引いていた。
良かった。元気になったみたい。
見送りに慣れてしまったら別れが怖くなくなっちゃう気するからさ、1回1回大事にしてこうと思うよ。
ふっかも幼い頃の涙の海、超えて行けるといいね。
















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。