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第1話

207
2024/02/21 12:00
俺はバンドマンにいわゆる"リアコ"をしている。


その人は大人気のバンドのギターを担当しているゆうたくんで


ゆうたくんの弾くギターの音はこの世のなによりも美しい。


俺は男だし恋愛対象になれないことなんてとっくに知ってる。


恋愛対象どころか認知すらもされないだろう。


だけど、古参と言えるくらい昔からライブや握手会に足を運んでいる。


今日はそんなゆうたくんたちのバンドの5回目のライブ。


会場は大盛り上がりで、ゆうたくんのギターのソロのところは特に盛り上がった。


楽しそうに笑顔で盛り上げるお客さんもいれば


ゆうたくんたちの演奏に感動して涙するお客さんもいて


いつかこんな風に自分も周りに影響を与えられる人になりたいと憧れを抱くくらいにゆうたくんたちが大好きだ。


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『あー、楽しかった。』


『まじで最高だわ。』


『ゆうたくんってやっぱり超かっこいいね。』


そんな言葉が周りからたくさん聞こえてきて


嬉しい気持ちもあれば少し嫉妬する自分もいる。


1人ライブの帰りはラーメン屋に行く自分のルーティーン。


今日もそんなラーメン屋を楽しみにしながら会場の人が少なくなるのを待つ。


あ「そろそろ行くかー、」


会場を後にする前に人気の少ないトイレに寄った。


あ「あー、ゆうたくんと付き合える世界線どこー笑」


1人でトイレで呟く。


寂しいな。


諦めるべきなのにな。


…ん?


トイレの水道にシルバーのリングが置いてあった。


忘れ物かな。


そのリングを持って近くにいた警備員さんに渡すと


警備員さんはなにかに気づいたように慌てた様子で少し待っててくださいと言った。


あ「あ、はい。」


今日は何味のラーメンを食べようかな。


ゆうたくんは何味のラーメンが好きなんだろ。


一緒にラーメン食べるとか夢のまた夢すぎる、笑


それにしても警備員さん焦ってたな。


大丈夫かな。





ま「お待たせしました。スタッフの乙部です。」


あ「あ、スタッフさん…?」


ま「お忙しいところすみません。時間がありました少し着いてきてもらってもいいですか?」


まずい。


なにかしちゃったかな。


ライブ出禁とかにされたら


俺もうやっていけない、


あ「あの、俺なにかしちゃいましたか?」


ま「いえ、そんなことないですよ。」


俺は不安を抱えながらスタッフさんについていくことにした。





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