jm side
…ジョングガ、覚えててくれてるかなぁ
ここの庭園、昔一緒に来たんだよな…
その時はまだ、
僕も次期国王なんてことは決まってなくて
ひたすら外で遊び回ってたなぁ…
そんなことを呟いたとき
秋の風が花たちを揺らした
その光景が何故か
懐かしく思えてしまった
目を向けた先には
昔みたいなまん丸な目の
ずっと会いたかった人がいた
会えたことが嬉しくて
座っていたベンチから立ち上がってしまった
"忘れられていたらどうしよう"なんて恐怖が
僕の声を小さくしていく
ジョングガは言葉が詰まったように
口を開けたり閉じたりして
しばらくすると
俯いて黙ってしまい、
遂には涙を流し始めた
僕が駆け寄ってそう聞くと
ジョングガは首を振った
そして、袖で涙を拭くと
僕が知っているジョングガじゃないような口調で
どこか寂しそうに
口を開いた
その口調はまるで
僕との出会いを、
幼い頃の思い出を
無かったことにしているみたいで
すごく寂しかった
背を向けてしまったジョングガを引き止め
その背中に必死に話しかけるけど
やっぱりジョングガはどこか他人みたいで。
"ジミン様"なんて
みんなと同じように僕を呼ぶんだ
きっと彼と僕との間には
「立場」という大きな壁があって
少しだけこれから見る世界が違うと言うだけで
愛らしい笑顔を向けてくれなくなるんだ
明るく振る舞わないとなのに、
ジョングガの前では
かっこいい"ジミニヒョン"じゃないとなのに、
どうしても視界がにじんでしまう
どうしてもここから離れたくて
急いで自室へと足を進める
覚えていないという言葉が
ここまで突き刺さるなんて思わなかったな
Next.
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。