第2話

第1話「同じ名を持つもの」ー琴音編ー
13
2026/01/20 11:25 更新








逃げなければならない________



そう思った瞬間、人はだいたい逃げられなくなる。



足が床に縫い留められたみたいに動かない。



視線だけが、目の前の“それ”から外れなかった。



異形は、確かにこちらを見ていた。



いや、見慣れすぎている目だった。














琴音(異形)
琴音(異形)
ソンナ顔シナイデヨー笑







異形は、軽く肩をすくめた。



その仕草すら、記憶の中のままだ。






琴音(異形)
琴音(異形)
似タモノ同士ニ
向ケル顔ジャナイジャーン笑







その言葉で、空気が一段冷える。






琴音
琴音
……やめて








が低く言った。声は震えていない。



けれど、それが逆に怖かった。







琴音
琴音
その声で、喋らないで








異形は一瞬だけ目を見開き、



それから、楽しそうに笑った。







琴音(異形)
琴音(異形)
アア、ヤッパリ覚エテルンダ







笑顔が歪む。口角が不自然な角度で吊り上がり、



影が顔の半分を飲み込んだ。







琴音(異形)
琴音(異形)
ネエ、覚エテル?
アノ時、君ガ言ッタコト
琴音
琴音
…?








誰も答えない。答えられない。







琴音(異形)
琴音(異形)
『絶対ニ、ミンナデ生キ残ロウ』ッテ






私に似た異形は、指先を軽く鳴らした。



その瞬間、周囲の空間が軋んだ。



壁に走る亀裂。



床が波打つように歪み、



現実が“耐えきれなくなっている”のがわかる。





琴音
琴音
っ、来る!





私に似た異形の叫びで、ようやく体が動いた。



後ろに跳ぶ。



次の瞬間、さっきまで立っていた場所が



黒く、異様な形に削れていた。



攻撃だった。迷いのない、一撃。







琴音
琴音
……本気、なんだね







そう呟いた声は、たぶん自分のものだった。



私に似た異形は、首を傾げる。






琴音(異形)
琴音(異形)
本気? 当然デショ




その目が、まっすぐこちらを射抜く。






琴音(異形)
琴音(異形)
ダッテコレハ_______





















琴音(異形)
琴音(異形)
生キ残ッタ側ト、
捨テラレタ側ノ再会ナンダカラ







次の瞬間、複数の影が動いた。



暗がりの奥。屋根の上。



壊れた街灯の向こう。



_______いる。



一体じゃない。



かつての??だった“異形”が、複数。






琴音
琴音
(……囲まれてる)







誰かが息を飲む。



異形たちは、誰も急がない。



逃げ道を塞ぎながら、



まるで“話し合い”をするかのように



距離を詰めてくる。






琴音(異形)
琴音(異形)
安心シテ







私に似た異形が言った。






琴音(異形)
琴音(異形)
スグニハ殺サナイ







その言葉に、背筋が凍る。






琴音(異形)
琴音(異形)
君ニハチャント選ンデモラウカラ







一歩、また一歩。






琴音(異形)
琴音(異形)
人ノママ、壊レルカ







私に似た異形の影が重なる。







琴音(異形)
琴音(異形)
________私タチミタイニナルカ








沈黙。



そして、私が歯を食いしばって言った。






琴音
琴音
……ふざけないで







声は小さい。でも、確かに意思があった。







琴音
琴音
君たちが何になろうと、私は______














拳が握られる。







琴音
琴音
ここで止める。







一瞬、異形たちが静止した。それから、






琴音(異形)
琴音(異形)
ハハ……







私に似た異形が、懐かしそうに笑った。






琴音(異形)
琴音(異形)
ソノ顔ダ









異形の声が、少しだけ柔らぐ。






琴音(異形)
琴音(異形)
ヤッパリ君ハ、最後マデ
“コッチ側”ニ来ナインダネ







空気が張り詰める。次の瞬間_______







本当の戦闘が、始まった。






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