何が起こっているのだろうか。
梅原は昨日自身の目で、確かに見たのだ。
江口の運命の糸が別の誰かと結ばれているのを。それなのに何故。
何故、再び2人の間の糸は結ばれているのだろうか。
梅原が安堵したのもほんの一瞬で、すぐに先日の江口の様子を思い出して絶望感を味わう。
こんなふうに優しくされて、切れたらまた今まで通りに戻るのだ。
そんなの耐えられるはずがなかった。
今までであれば帰り際に切っていた糸だが、今日は早々に切る。
不思議そうにこちらを見る江口の様子は変わっていないように見えるが、そんなことを気にしている余裕などなかった。
兎に角頭にあるのは繋いである状態に慣れてはいけないということだけ。
その日も繋がれては切り、繋がれては切りを繰り返す。
もう、切りたくない。だなんて、こんな想いは知りたくなかった。
心臓が握り潰されるような感覚がして、人気のないところに隠れ胸を押さえて蹲る。
これも江口さんのため。
そう言い聞かせながら立ち上がると、スタジオに戻った。
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江口の様子がおかしいことに気づいたのは糸を切り始めて一ヶ月ほど経った頃だった。
どことなく元気のない姿に気づいたのは梅原だけのようで、周りは彼に何も声をかけない。
糸がつながるリスクを考えれば一緒にいないほうがいいと分かっているのに、惚れた弱みなのか、悲しそうな目をする江口を放ってはおけなかった。
梅原が異変に気づいたことに驚いた様子で目を丸くした江口だったが、すぐにいつもの笑顔でうんと頷く。
2人の糸は切られて漂ったまま。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。