「はい。」とあなたさんは笑顔で答え、立ち上がる。
彼もあなたさんに続いて立ち上がると、あなたさんの後ろを着いて歩いた。
あなたさんがそう言いながら財布を出せば、彼は慌てたように口を開く。
ハッキリと答える彼に、「それは申し訳ないから…」とあなたさんは困ったような表情を浮かべた。
するとその時、店内に着信音が響く。
あなたさんはスマホを取り出し、画面を確認した。
あなたさんは疑いの目を向ける彼に、スマホの画面を見せた。
あなたさんは彼に自分の財布を押し付けると、足早に店内から出て行った。
彼はこちらを見ずに訊いてくる。
金額を教えると、彼は当然のように自分の財布を取り出し、当然のようにそこからお金を出してきた。
カウンター席からは蘭さん達のそんな会話が聞こえてくる。
聞こえているだろうが、彼は全く反応しなかった。
会計をして、お釣りを差し出す。
すると彼はお釣りを受け取ると同時に、いきなりそう訊いてきた。
一瞬、何の事かと困惑するが、すぐに理解する。
こちらを見つめる彼の目を、しっかり見つめ返して答えた。
突然そんな事を言われ、思わず面食らう。
だがそんな僕の事はお構い無しに、彼は続けた。
「…でも。」と言いかけ、彼は強い意志が宿っている目でこちらを見つめてきた。
…これには素直に驚いた。
彼は自分の気持ちより、あくまであなたさんの幸せを優先するのだと。
…本気の目だった。
するとその時、店の外が騒がしくなった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。