『私に、彼らに、残された時間は少ない』
───この声は?
知らない何かの声
でも、不思議と安心感があることだけは覚えていた
柔らかな羽毛布団から勢いよく起き上がる
時計を見ると、短針は7時、長針は45を指していた
いや、良くない。実に良くない
ブツブツと言っていても何も始まらないので、服を着替えようとクローゼットの方へ向かった
忌々しい、月曜日が来てしまった
ふと、今日見たような気のする夢を思い出す
昔、母親が眠る前に聞かせてくれたお話
のような気がしたが、どこか違うような気がする……そんな曖昧な夢だった
制服に腕を通し、ネクタイを締める
制服は男子用だ。余談だが私、いや、僕は男として周りに見られているはず。
鏡に映る自分の姿は男にしか見えない。
体型は女子高校生になったばかりとは思えないほど幼いので、周りには身長の低い男の子として見られている
鏡に映った自分を見ると、ため息が出るのだ。
すると、急に視界が歪んだ……ような気がした
what???
寝起きのせいだと自分に言い聞かせ、カバンを手に取る
方向転換をしたその時、それは起こった
足を滑らせる
しかし、その衝撃は、いつまでたっても来なかった
だがしかし、意識は段々と遠のいていく。
微かな意識の中、誰かに腕を掴まれたような気がした
その指には、確かに金に輝くつけ爪があった
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!