第4話

🖤
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2026/01/05 15:41 更新

ウヨンは、触れない。

それが一番、厄介だった。





彼はいつも近い。
距離はゼロに等しいのに、指先はぎりぎり触れない位置で止まる。




「……逃げないんだ?」




低い声が耳元に落ちる。
あなたは壁に背をつけたまま、動けない。



「逃げたら、追いかけるよ」



笑っているのに、冗談に聞こえなかった。

    







最初は、ただの偶然、と自分に言い聞かせた。

練習室の前、廊下、エレベーター。
同じタイミングで会うことが増えただけ。



「また一緒だね」



その“また”が、回数を増やしていく。

ウヨンはよく観察していた。
呼吸の速さ、視線の揺れ、声のトーン。


「ねえ、」



「今、無理して笑ったでしょ」





言い当てられるたび、心臓が跳ねる。

理解される安心感と、
見透かされる怖さ。




その両方を、彼は与えてきた。




わたしは異常だ。安心感を覚えるなどあってはいけないことだ。早く普通に戻らなければ。

何度そう思おうとしても、彼の笑顔が怖さだけを感じさせない。



このときにはすでに、あなたはウヨンの術中にあったのだ。

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