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第3話

‐三結‐ 『女遊び』
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2026/02/23 07:01 更新
朔忌
朔忌
「いらっしゃいませ。」
鈴の音と共に入ってきたのは、震えた声の少女だった。
柚葉
「ここって……本当に、願いが叶うんですか」
紬が答えようとするより早く、朔忌が静かに言った。
朔忌
朔忌
「結び方次第です」
少女は名を柚葉と名乗った。
大学二年生。
一度振られた相手に、もう一度告白したいのだという。
柚葉
「諦めた方がいいって、みんな言うんです。でも……」
指が強く握られる。
柚葉
「ちゃんと好きって言えなかったから」
沈黙。
紬は思わず言った。
紬
「素敵だと思う」
朔忌の髪が、わずかに揺れる。
朔忌
朔忌
「願いは、“後悔を結び直す”ということですね」
朔忌が静かに、小さな箱を取り出した。
朔忌
朔忌
「これを持って行ってください。」
中には、二枚の小さなカード。
一枚は「話しかけやすいタイミング」を示すメモ、もう一枚は「自然な会話のきっかけ」を書いた紙だった。
朔忌
朔忌
「この日、この場所、この瞬間――偶然を演出するだけです」
朔忌は帳面を開き、墨で軽く線を引いた。
朔忌
朔忌
「結果は、あなた次第です」
灯が、強く揺れた。
朔忌
朔忌
「しかし、我々は代償を頂かなければなりません。」
柚葉は顔を上げる。
朔忌
朔忌
「少しの勇気を、未来に置いていくことです」
意味が分からず、紬が首を傾げる。
朔忌
朔忌
「あなたが自分で選び、動く。結果がどうであれ、後悔は残らない。それが代償です。」
少女は頷いた。
小箱を抱え、深呼吸して店を出る。
次の瞬間、柚葉は笑っていた。
柚葉
「……ありがとう」
その笑顔は、あまりにもまぶしかった。
少女が帰った後、紬は息を吐く。
紬
「上手くいくといいね」
朔忌は戸口を見つめたまま、返事を返さなかった。。
灯が、ほんの少しだけ暗くなる。
紬は気づかない。
朔忌の指先が、白くなるほど握られていることに。
朔忌
朔忌
(どうして、)
朔忌
朔忌
(どうして、あんなに迷いなく笑えるのでしょうか)
その想いは、灯の中に溶けた。
朔忌は帳面を閉じる。
その背に、影が落ちる。
長く、とても長く。

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