鈴の音と共に入ってきたのは、震えた声の少女だった。
紬が答えようとするより早く、朔忌が静かに言った。
少女は名を柚葉と名乗った。
大学二年生。
一度振られた相手に、もう一度告白したいのだという。
指が強く握られる。
沈黙。
紬は思わず言った。
朔忌の髪が、わずかに揺れる。
朔忌が静かに、小さな箱を取り出した。
中には、二枚の小さなカード。
一枚は「話しかけやすいタイミング」を示すメモ、もう一枚は「自然な会話のきっかけ」を書いた紙だった。
朔忌は帳面を開き、墨で軽く線を引いた。
灯が、強く揺れた。
柚葉は顔を上げる。
意味が分からず、紬が首を傾げる。
少女は頷いた。
小箱を抱え、深呼吸して店を出る。
次の瞬間、柚葉は笑っていた。
その笑顔は、あまりにもまぶしかった。
少女が帰った後、紬は息を吐く。
朔忌は戸口を見つめたまま、返事を返さなかった。。
灯が、ほんの少しだけ暗くなる。
紬は気づかない。
朔忌の指先が、白くなるほど握られていることに。
その想いは、灯の中に溶けた。
朔忌は帳面を閉じる。
その背に、影が落ちる。
長く、とても長く。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。