長く細いため息を吐いて、薄く目を開く。
クラスメイトが僕に水をかけて笑う。
僕を罵って笑う。
僕に仕事を押し付けて笑う。
僕のノートに罵詈雑言を書き連ねて、笑う。
ゲラゲラ、ケラケラと。
うるさい、うるさい、うるさい!!
息が苦しくなって目を覚ました。
冷房の効いた部屋だと言うのに、酷く汗をかいていた。
何処かから、セミの鳴き声が微かに聞こえた。
一階に降りる。両親はいない。
水道の水をコップいっぱいにいれ、飲み干す。
ゲホゲホとむせた。
流しに乱暴にコップを置く。
そのまま流れでソファへと倒れ込んだ。
ベトベトの服のままだけど、いいや。
長く細い息を吐いた。
僕はいじめられていた。
原因は些細なこと、クラスのリーダー格の男子が好きだった女子が、僕に告白してきたから。
僕は恋人はいらない、と断ったけど、男子は納得してくれなかった。
いじめられてから半年ほど経って不登校になった僕は、両親にも相談できず、なんなら呆れられた。
両親は、優秀な兄にばかり構うようになった。
僕が部屋にこもり続けることに、誰も文句を言わなかった。
それが、ただただ好都合だった。
でも、僕だって学校に行きたい。
無意識にポツリとこぼした言葉に、思わず失笑した。
そうだ、クラスメイト全員、苦しんで苦しんで死ねばいい。
開けていた上窓の方から、光とともに紙がひらひらと落ちてきた。
床に落ちたものを拾い上げた。
紙の書き出しは、こうだった。
初めまして、親愛なる願い人へ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。