第2話

魔理沙
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2025/01/26 07:08 更新
澄んだ青が目の前に広がっている。

「ここ、どこ?」

身動きがとれない。強い風を感じる。
これは、落下している!?
慌てて身をよじるも、重力には抗えない。

冷たい風も、不思議と心地よく感じる。ほんとに、死ぬのかぁ。私は、一抹いちまつの不安を忘れ去るように、ゆっくりと目を閉じた。

次の瞬間、私の眼前に影が落ち、風を切る音がした。

「よう!大丈夫かぁ?」

PCから毎日のように聴いた、太陽のように明るい飾らない声が脳内にこだまする。
恐る恐る目を開くとそこには、。
陽光を一身に浴びて輝く金色こんじきのくせ毛。
魔女を象徴する、フリルがふんだんにあしらわれた大きな帽子。
つり目がちで吸い込まれそうなほど鮮やかな瞳

そう、彼女は私の愛する魔理沙だった。


「おい、なんか言えよー」
「ひゃいっ!」

突然のことについていけない。魔理沙が私をお姫様抱っこ?これは夢か、きっとそうだ。死ぬ間際に見る、、走馬灯のような!最期にこんなサプライズを用意してくれるなんて、神様は粋だなぁ、、ってああ!夢の中といえど魔理沙を待たせている!はやく何か返さねば!ええと、、

「ははっ!混乱してるみたいだな。とりあえず下まで降りよう。そう心配するな。」
「あ、あの、ありがとうございます!」
「っと、ついたぞ!立てるか?」

魔理沙に支えられながら、やっとのことで立ち上がり、辺りを見回す。
鬱蒼うっそうと茂る大きな木々、そこに繁茂するつたやなんとも悍ましい見た目のキノコ。
ここは、魔理沙が住まう魔法の森にそっくりだ。

あまりの美しさに舌を巻いていると、ふいに魔理沙に手を取られた。
「とりあえず、私の家まで連れて行こう!話はそれからだ!」
「い、家!?そんな、申し訳ないです!」
「いいからついてきな!」

手を引かれるままに歩みを進めるが、木の根は剥き出しで、先刻まで雨が降っていたのかぬかるんでいる地面。一歩踏み違えば転倒は避けられない。
しかし魔理沙は慣れた様子でひょいと進んでゆく。

とはいえ現代社会を生きる私にはこの険路は酷であった。魔理沙の手を煩わせることのないよう、めいっぱい慎重に、それでいて速く。

十二分に気を付けていたつもりだったが、一息ついた瞬間、私の視界がくるりと空を見た。バランスを崩して転んでしまったのだ。慌てて体制を整えようとすると、ギョッと目を見開いた魔理沙が視界を占領した。

「すまない、、。また転ぶと危ない。こうして抱えていっていいか?」

魔理沙は今にも泣き出しそうな顔だ。ぬかるんだ土で服が汚れるのもいとわず、潤んだ眼差しで懇願されては、誰も抗えないだろう。

原作でも二次創作でも、魔理沙のこんな表情は見たことがない。どうして出会ったばかりで何も知らない私にこんな表情を向けてくれるのか。生粋のお人好し、というやつだろうか。
すっかり心を奪われてしまった私は、頷くので精一杯だった。

それからはあっという間だった。
私は細身ではないが、魔理沙の軽快な足取りを見るに、普段から異変解決に奔走する魔理沙にとって、人1人抱えるなんて造作もないことのようだ。

「ここが私の家だ!」
「霧雨、魔法店、、」

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