ゾムさんはすれ違ったコネシマさんとハイタッチして、2人が居たところに走った。
手招きされたので俺も走ってついていく。
シャオさんの聞きやすい声が練習場に響く。
俺もゾムさんも素早く動く。
後ろを取られたら負けだ。
だが、仕掛けていかなければならない。
右、左、
ゾムさんの動きは素早いが単純だ。
もしかしたら、早めに決着がつくかも。
一瞬、ゾムさんの手元がポケットに入った。
よし!今のうちに…
だが、ゾムさんの手には手榴弾が握られていた。
そして右手はピックにかけられてある。
強い。
俺が一瞬目をそらしたからか。
何歩か後ずさりすると同時に爆弾が爆発する。
クッソ…前が見えへん。
あれ、今何かが光った気が…?
ヒュンと音を立ててナイフが飛んでくる。
頬に痛みが感じる。
次はどこから来る?
煙で何もかも見えない。
そうか!上や!
自分の真上に視線を上げる。
2メートルほど高いところにナイフを持ったゾムさんが自分の上に着地しようとしている。
駄目だ。間に合わない。
ゾムさんは俺の上に見事着地し、バランスを崩した俺がよろける。
俺を床に押し倒し、ナイフを首元に当ててくる。
くっそ…
何だか人生で初めて負けた気がする。
だけど…楽しかった。
今まで弱い奴らしか戦ったことが無かった。
だから自分よりもレベルが高いゾムさんと対決するのは新鮮だった。
ゾムさんが横でピョンピョン飛びは跳ねているとき、コネシマさんが俺の近くにやってきた。
そして俺の手をとり、立ち上がらせてくれた。
うるさいなぁと思いつつも、コネシマさんの質問に回答した。
そういうとコネシマさんはそうかと笑った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!