「こ、後野っ!」
昼休みの今、わたしは後野を呼んだ。
後野はふりかえって、
「あ…」
とほんの少し顔を赤く染めた。
わたしも赤くなりそう。
返事なんて言いにくくて本当に。
ぜひ付き合ってなんてあーもー!!やだやだ。
わたしはうつむきながら言った。
「STのあと、話したいことあるから」
後野はうんと頷く。と、すぐに、男友達に呼ばれて行ってしまった。
少し寂しい。こっちは勇気出して言ったのに、「あ…」だけだよ喋ってくれたの。
それでも、返事気になってるだろうし、わたしも頑張らなくちゃね。
__美少女の名にかけて。
調子乗りました。えへ。
さてさて、放課後になりました。
わたしはそっと後野を見た。
「後野。」
近くまで行ってそっと囁いた。
ばれたら男子共にからかわれそうでやだなぁ。
「あ、返事。」
後野は振り返った。
もう、すっごく照れてるのがわかって可愛いなぁ!!と思う麻白天使。
わたしほどではないけど、なんて心の中で突っ込む麻白悪魔。
あぁ、なんか人格変貌しそう。
「どこ行くの」
と彼。わたしは
「あまり考えてないよ」
と言った。我ながら適当なやつだ…。
「じゃあここでいいじゃん?」
「え、聞こえるよ」
「あ、そか」
ははと後野が笑って、じゃあ渡り廊下いこ!と私が言った。
てくてくとわたしは後野のあとを歩いた。
とても大きい背中だなあって思う。
「返事言ってもいいかな」
渡り廊下に着いてから、わたしはそっと上目遣いで言った。
もちろん、上目遣いなのは計算だけどねっ!
「あ、、うん。」
後野はわたしの目を見つめた。
…わたしは恥ずかしくて逸らした。
「よ、よろしくお願いします」
わたしは爪をいじりながら言った。
「ま、まじ?」
「ま、まじだよ」
「ありがとうっ」
後野はめっちゃ笑った。
でも、めっちゃ顔が火照ってた。
「じゃあ、あー、えっと、」
「??」
後野は言う。
「付き合ってください!」
わたしは嬉しくて湿疹してしまいそうで、
でもなんとかたった。そしてニコニコした。
「はい!!ぜひ!」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!