澤村「あなたがもう2年生か。早いな〜」
「大地くん、お父さんみたいだよ。」
私たちは学校へ行くのも、家に帰るのも一緒。
大地くんが心配しすぎなのもあるけど、
昔、いろいろあったから。
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(過去の話)
4年前。
私が中学1年生の頃。
その頃から学校へ行くのは一緒だった。
でも、大地くんはバレー部に入っていて、私は部活に入っていなかった。
だから、帰りは時間が合わなくて一緒に帰ることができなかった。
途中まで友達と帰っていても、どこかで必ず1人になる。
友達と離れて、1人になったタイミングでその事件は起こったんだ。
私は、異性と同性関係なしに人の目を惹き付けてしまうらしい。
私自身、全く自覚はないけど…
お母さんも昔からそうだったみたい。
過去形なのは、私が小学生になった時に病気で死んじゃったから。
そしてお父さんもまぁかっこいい。
だからか、ストーカーにつけられてたんだ。
いきなり知らないおじさんに話しかけられてすごく怖かった。
当時は中学生で、男の人に力で勝つことはできなくて、
危うく連れていかれそうになったところを、たまたま部活内容がミーティングで、いつもより早い時間に帰っていた大地くんが助けてくれた。
この日から帰りも必ず大地くんと一緒に帰ることになった。
でも、部活をやってる大地くんと、やっていない私では、どうしても時間が合わなかったから、
もともといなかったバレー部のマネージャーになることになった。
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こんなことがあったせいで、高校生になった今でも一緒に登下校をしている。
私は大地くんと2人でいれるこの時間が大好きだけど、
大地くんはどう思ってるんだろう。
めんどくさくないのかな?
「ねぇ大地くん?」
澤村「ん?どうした?」
「私、もう高校生なんだし、そろそろ1人でも大丈夫だよ?」
私は高校ではマネージャーをやっていない。
去年は教室に残って、バレー部が終わるタイミングで体育館に行って一緒に帰ってたけど、
さすがにもう大丈夫だ。
澤村「何言ってるんだ?ダメに決まってるだろー。もうあんな怖い思いはさせたくないし、俺もしたくないからな。」
「大地くんも怖かったの?」
澤村「そりゃあ、大事な人が知らん人に連れ去られそうになってたんだぞ?軽くトラウマだよ。」
そう言って大地くんは笑ってたけど、
私は、『大事な人』って言われたことが嬉しくてその後のことは何も聞こえなかった。
澤村「あなた?顔赤いぞ?」
大地くんが伸ばしてきた手を思いっきりよけて、
「だ、大丈夫だから!!」
と言った。
大地くんは私の反応に少しびっくりして、その後すぐに笑顔になった。
澤村「とにかく、あなたは黙って俺に守られてればいいんだから。
俺がめんどくさいと思ってるかもとかありえない心配はするなよ?」
そう言いながら頭を撫でてきた。
ほら、そういうとこだよ。
なんで私が思っていることが簡単に分かっちゃうんだろう。
澤村「小さい頃から一緒だったんだ。
当たり前だろ?」
「…な!?」
澤村「あなたが考えてることくらいすぐ分かるぞ。」
何も言ってないのに…
澤村「今日は、始業式終わってから部活だから、多分5時くらいになるかな。」
午前中は入学式で、午後から始業式だった。
「まだ1年生は部活来ないの?」
澤村「来ないぞ。来週の月曜から仮入部開始だからな。」
じゃあ、2・3年生だけか…
「私も今日体育館行ってもいい?
潔子さんのお手伝いするし。」
去年、帰る時に毎日体育館へ行っていたらバレー部の人たちと仲良くなった。
同じクラスの力と成田がバレー部なのは知らなかったけど。
中学生の時マネージャーをやっていたことから、合宿の時とかは手伝ってたし潔子さんのことも知ってる。
澤村「お、部活来てくれるのか??」
「みんながいいなら。」
澤村「いいもなにもあいつら喜ぶぞ!」
「じゃあ行くね。」
澤村「おう!」
もうすぐ学校に着く。
2人でいられる幸せな時間も終わり。
同い年だったら、クラス一緒かな〜とかいろいろ楽しみがあったんだろうな…
『おーい!!!』
あ、スガさんだ。
澤村「おぉ、スガ。」
「おはようございます。」
菅原「あなたおはよ!
大地ー。俺ら同じクラスだぜ!」
澤村「そうか。
今日の部活あなたも来るってさ。」
菅原「いや反応うす!!もっと喜べよ!
え、まじ!?あなた来てくれるの?」
朝から元気だな…
「はい。行きます。」
菅原「やりー!俺頑張っちゃう!」
『あなたー!!』
あ、夏海だ。
「私も友達のとこ行くね。じゃあまた部活で。」
澤村「おう!」
菅原「あなたと一緒に登校とか羨ましい…」
スガさんが何か言ってたけど聞こえてないふりをした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!