あなたside
今日は月曜日。
結局、昨日みんなが起きたのは昼過ぎで、それからも一日中ダラダラと過ごした。
縁下「あなた、おはよう。」
「力、おはよ。朝練終わった?」
縁下「終わったから教室来たんだよ。」
笑いながら私のおでこをコツンと叩く。
「あ、明日青葉城西と練習試合するんだってね。」
縁下「そうそう。大地さんから聞いた?」
「うん。お手伝い行くね〜。」
明日はバイト休ませてもらわないと。
あ、今日バイトあること大地くんに言うの忘れてた…
放課後にでも言いに行こう。
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(放課後)
夏海「あなた!また明日ねー!」
「うん!部活ファイト〜」
縁下「あなた、今日もバイト?」
「そうだよ。力も部活頑張ってね?」
私も早く大地くんのとこ行かないと。
3年生の教室へ足を進めた。
大地くんは4組だったよね…
どこにいるんだろ。
周りを見渡していると、廊下を歩いている大地くんの後ろ姿を見つけた。
「あ、大地く_____」
『澤村ーー!!』
私の声が大地くんに届くことはなかった。
…道宮さんだ。
女子バレー部の主将で、きっと、大地くんのことが_______。
私の中が黒い感情でいっぱいになる。
大地くんと1番近い女の子は私だ。と胸を張って言える。
でも、恋愛対象としてはどうなんだろう。
やっぱり、道宮さんとか潔子さんがいいのかな…
同級生で話も合うだろうし、道宮さんは可愛くて、潔子さんは美人だ。
私にはないものをたくさん持っている。
________《近くて遠い存在》。
私に1番当てはまる言葉だと思う。
"幼なじみ" として、1番近い存在であると同時に、
"幼なじみ" だからこそ踏み入れない境界線がある。
もし、"幼なじみ" じゃなかったら私もその境界線を越えられるのに…
ここまで考えたところで、頬を冷たい感触がなぞった。
泣いてると分かると、来た道を戻るように大地くんから離れた。
途中、誰かに名前を呼ばれた気がするけど、それを気にするほど余裕がなかった。
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菅原side
部活に行こうとすると、見覚えのある後ろ姿が目に入った。
あなただ。
3年のフロアにいるなんて珍しいな。
「あなた!どうかしたのか______」
俺がそう呼びかけると同時に、あなたは俺の横を走り去っていった。
え、泣いてた…?
何かあったのかと思い、あなたが見つめていた先に目線をやると、すぐに理由が分かった。
「あぁ、あれか…」
その先には楽しそうに話す大地と道宮さん。
俺はすぐにあなたを追いかけた。
追いかけたというより、探した。
あなたは、誰かの前では絶対に弱いところを見せない。
1人に慣れてるからか、全部自分で何とかしようとする。
本当は1人が嫌いなくせに、人に頼るのが苦手なんだ。
この時間帯に人がいないところ…
とりあえずあなたの教室に行ってみよう。
『…うぅ、ゲホッ、』
_____________見つけた。
やっぱり、声を殺して1人で泣いてた。
「あなた…?」
俺が声をかけると、肩をビクッと震わせて、無理に元気な声を出すんだ。
あなた「す、スガさん?どうしたんですか?」
手では必死に涙を拭っている。
「あなた、なんでこっち見てくれないの?」
あなたに1歩ずつ近づきながら聞く。
あなた「何にもないです!ほら、部活行かないと時間遅れちゃいますよ?」
俺が部活に行ったらまた1人で泣くつもりかよ。
あなたの正面に立った。
「じゃあ、なんで泣いてるの?」
あなた「こ、れは、目にゴミが入って!」
ありきたりな嘘をつく。
そんなに俺は頼りないか?
好きな子が泣いてる時に胸を貸すことくらいできるよ…
「あなた、おいで?」
そう言いながら腕を広げる俺を、あなたは不思議そうに見つめる。
あなたの腕を引っ張って、
「1人で泣かなくていいから…」
抱きしめる力を強めると、あなたはもう一度涙を流した。
あなた「…わた、わたし、ど、れだけ頑張っても、幼なじみい、じょ、にな、れな、うっ、ゴホッ、」
あなたの小さな体を抱きしめながら、頭を撫でる。
「…俺にしろよ。」
あなた「……へ?」
顔を上げたあなたの目を見つめて言った。
「俺ならあなたにこんなに辛い思いさせない。」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!