第30話

俺にしろよ
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2020/08/21 03:45
あなたside

今日は月曜日。



結局、昨日みんなが起きたのは昼過ぎで、それからも一日中ダラダラと過ごした。



縁下「あなた、おはよう。」



「力、おはよ。朝練終わった?」



縁下「終わったから教室来たんだよ。」



笑いながら私のおでこをコツンと叩く。



「あ、明日青葉城西と練習試合するんだってね。」



縁下「そうそう。大地さんから聞いた?」



「うん。お手伝い行くね〜。」



明日はバイト休ませてもらわないと。



あ、今日バイトあること大地くんに言うの忘れてた…



放課後にでも言いに行こう。



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(放課後)


夏海「あなた!また明日ねー!」



「うん!部活ファイト〜」



縁下「あなた、今日もバイト?」



「そうだよ。力も部活頑張ってね?」



私も早く大地くんのとこ行かないと。



3年生の教室へ足を進めた。
















大地くんは4組だったよね…



どこにいるんだろ。



周りを見渡していると、廊下を歩いている大地くんの後ろ姿を見つけた。



「あ、大地く_____」



『澤村ーー!!』



私の声が大地くんに届くことはなかった。



…道宮さんだ。



女子バレー部の主将で、きっと、大地くんのことが_______。



私の中が黒い感情でいっぱいになる。



大地くんと1番近い女の子は私だ。と胸を張って言える。



でも、恋愛対象としてはどうなんだろう。



やっぱり、道宮さんとか潔子さんがいいのかな…



同級生で話も合うだろうし、道宮さんは可愛くて、潔子さんは美人だ。



私にはないものをたくさん持っている。



________《近くて遠い存在》。



私に1番当てはまる言葉だと思う。



"幼なじみ" として、1番近い存在であると同時に、



"幼なじみ" だからこそ踏み入れない境界線がある。



もし、"幼なじみ" じゃなかったら私もその境界線を越えられるのに…



ここまで考えたところで、頬を冷たい感触がなぞった。



泣いてると分かると、来た道を戻るように大地くんから離れた。



途中、誰かに名前を呼ばれた気がするけど、それを気にするほど余裕がなかった。



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菅原side

部活に行こうとすると、見覚えのある後ろ姿が目に入った。



あなただ。



3年のフロアにいるなんて珍しいな。



「あなた!どうかしたのか______」



俺がそう呼びかけると同時に、あなたは俺の横を走り去っていった。



え、泣いてた…?



何かあったのかと思い、あなたが見つめていた先に目線をやると、すぐに理由が分かった。



「あぁ、あれか…」



その先には楽しそうに話す大地と道宮さん。



俺はすぐにあなたを追いかけた。



追いかけたというより、探した。



あなたは、誰かの前では絶対に弱いところを見せない。



1人に慣れてるからか、全部自分で何とかしようとする。



本当は1人が嫌いなくせに、人に頼るのが苦手なんだ。



この時間帯に人がいないところ…



とりあえずあなたの教室に行ってみよう。



…うぅ、ゲホッ、



_____________見つけた。



やっぱり、声を殺して1人で泣いてた。



「あなた…?」



俺が声をかけると、肩をビクッと震わせて、無理に元気な声を出すんだ。



あなた「す、スガさん?どうしたんですか?」



手では必死に涙を拭っている。



「あなた、なんでこっち見てくれないの?」



あなたに1歩ずつ近づきながら聞く。



あなた「何にもないです!ほら、部活行かないと時間遅れちゃいますよ?」



俺が部活に行ったらまた1人で泣くつもりかよ。



あなたの正面に立った。



「じゃあ、なんで泣いてるの?」



あなた「こ、れは、目にゴミが入って!」



ありきたりな嘘をつく。



そんなに俺は頼りないか?



好きな子が泣いてる時に胸を貸すことくらいできるよ…



「あなた、おいで?」



そう言いながら腕を広げる俺を、あなたは不思議そうに見つめる。



あなたの腕を引っ張って、



「1人で泣かなくていいから…」



抱きしめる力を強めると、あなたはもう一度涙を流した。



あなた「…わた、わたし、ど、れだけ頑張っても、幼なじみい、じょ、にな、れな、うっ、ゴホッ、



あなたの小さな体を抱きしめながら、頭を撫でる。



「…俺にしろよ。」



あなた「……へ?」



顔を上げたあなたの目を見つめて言った。



「俺ならあなたにこんなに辛い思いさせない。」





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