第37話

時間がない
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2026/06/09 10:00 更新
「なるほど。お前を拉致した奴が人質をとっている、か」

「そうだ」


事情を説明し終えた迅くんは、無陀野先生に詰め寄る。


「わかったろ。時間がない!」

「待てガキ」


100人中100人が焦っていると答えるほど、明らかに焦っている様子の迅くんに、淀川先輩が言う。


「聞きたいことがある。すぐに事情聴取だ。子供の方はこっちで対処する。テメエで動くな」

「子供の顔知らねえだろ…!」

「調べれば済む」


偵察部隊なら造作もないことだよね。

しかし私がそう思うのと迅くんの思ったことは別。

苛立ちから歯軋りした迅くんが、淀川先輩の胸ぐらを掴む。


「時間がねえって言ってんだろ」

「血走ってんな。冷静さを保てない奴はすぐ死ぬぜ」


こんなこと、淀川先輩にとって当然なんともないことで。

いつもの調子で冷静に、かつどこか煽るような口調で迅くんに返す。


「なあ先生。アイツがあんなにテンパるの珍しくね」


その様子を見ていた四季くんは、無陀野先生に近寄る。


「なんか理由があるんじゃねえの?」


無陀野先生は顎に手を当てて考える。


「行かせてやったほうがよくね」

「止めても俺は行くからな」


淀川先輩の胸ぐらから手を離して、迅くんが無陀野先生に言った。

それを受けて、無陀野先生は私を見る。


「ちゃんと帰ってくるなら、私はそれでいいです」


無陀野先生が口を開く。


「皇后崎。戻り次第必ず話を聞かせろ。約束できるなら、俺と一緒に行くことを許す」

「許してんじゃねえよ。甘すぎやしねえか」


少し首を傾げて見上げる淀川先輩。


「こいつのことだ。行かせるまで話をしない。行かせたほうが効率がいい」


無陀野先生は、視線を迅くんへ向けて念を押す。


「いいな。戻ったら全て話せ」

「わかった」


「どうしますか?」


そう淀川先輩に聞いたのは馨。

淀川先輩は舌打ちを1つしてから指示を出す。


「残りの奴らは落ちてる情報全て拾え。髪の毛から何までだ」

「はい!」


こうして、子供を助けに行けることが決まった迅くんは、出口に向かって歩き、


「皇后崎くん」


そこを従児くんに止められた。


「この格好じゃ目立ちすぎるよ」


その手には、生徒たちや淀川先輩、馨が着ている、役職付きの隊員が着る服。

今の迅くんは上裸。

いつもつけている黒マスクもなし。

上裸で街を歩くことがそもそもアウトなのに、迅くんの体には目立つ傷跡がいくつもある。

今従児くんが差し出した服も、街中にいる分にはまあまあ、というかかなり目立つけど、上半身何も着ていないよりはマシ。


迅くんは従児くんから服を受け取ると、急いで着替えてかけて行った。

無陀野先生と四季くんも一緒に。

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