「なるほど。お前を拉致した奴が人質をとっている、か」
「そうだ」
事情を説明し終えた迅くんは、無陀野先生に詰め寄る。
「わかったろ。時間がない!」
「待てガキ」
100人中100人が焦っていると答えるほど、明らかに焦っている様子の迅くんに、淀川先輩が言う。
「聞きたいことがある。すぐに事情聴取だ。子供の方はこっちで対処する。テメエで動くな」
「子供の顔知らねえだろ…!」
「調べれば済む」
偵察部隊なら造作もないことだよね。
しかし私がそう思うのと迅くんの思ったことは別。
苛立ちから歯軋りした迅くんが、淀川先輩の胸ぐらを掴む。
「時間がねえって言ってんだろ」
「血走ってんな。冷静さを保てない奴はすぐ死ぬぜ」
こんなこと、淀川先輩にとって当然なんともないことで。
いつもの調子で冷静に、かつどこか煽るような口調で迅くんに返す。
「なあ先生。アイツがあんなにテンパるの珍しくね」
その様子を見ていた四季くんは、無陀野先生に近寄る。
「なんか理由があるんじゃねえの?」
無陀野先生は顎に手を当てて考える。
「行かせてやったほうがよくね」
「止めても俺は行くからな」
淀川先輩の胸ぐらから手を離して、迅くんが無陀野先生に言った。
それを受けて、無陀野先生は私を見る。
「ちゃんと帰ってくるなら、私はそれでいいです」
無陀野先生が口を開く。
「皇后崎。戻り次第必ず話を聞かせろ。約束できるなら、俺と一緒に行くことを許す」
「許してんじゃねえよ。甘すぎやしねえか」
少し首を傾げて見上げる淀川先輩。
「こいつのことだ。行かせるまで話をしない。行かせたほうが効率がいい」
無陀野先生は、視線を迅くんへ向けて念を押す。
「いいな。戻ったら全て話せ」
「わかった」
「どうしますか?」
そう淀川先輩に聞いたのは馨。
淀川先輩は舌打ちを1つしてから指示を出す。
「残りの奴らは落ちてる情報全て拾え。髪の毛から何までだ」
「はい!」
こうして、子供を助けに行けることが決まった迅くんは、出口に向かって歩き、
「皇后崎くん」
そこを従児くんに止められた。
「この格好じゃ目立ちすぎるよ」
その手には、生徒たちや淀川先輩、馨が着ている、役職付きの隊員が着る服。
今の迅くんは上裸。
いつもつけている黒マスクもなし。
上裸で街を歩くことがそもそもアウトなのに、迅くんの体には目立つ傷跡がいくつもある。
今従児くんが差し出した服も、街中にいる分にはまあまあ、というかかなり目立つけど、上半身何も着ていないよりはマシ。
迅くんは従児くんから服を受け取ると、急いで着替えてかけて行った。
無陀野先生と四季くんも一緒に。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。