現在日本一家が住んでいるこの家は、元々日帝が建てたものだ。そのため、所々日帝の生活スタイルに会うようにカスタマイズされている。
そんな彼が毎日のように使う、今日は清々しい青空が広がってぽかぽかとした、そんな昼下がりの屋外稽古場には乾いた打撃音が響いている。
日帝が木刀を振る。鋭く、無駄のない動き。対するのはソ連、少し離れたところから応援してるのはイタ王だった。
日帝の振りをギリギリでかわしたソ連は日帝の後手に回りながら言う。
日帝もすぐに体制を整え、
日帝は後ろに飛び跳ねて距離を取り、ソ連はそれを追う。
ソ連は元前の体の大きさを生かして一瞬でリーチを詰め、木刀を構えた。
ソ連が日帝の横腹に振りをした瞬間、日帝は一瞬でかがんで攻撃をかわす。
そして目にも止まらぬスピードで後ろに回って、ソ連の首の真横に木刀を当てた。
日帝はふっと笑って、
ソ連は木刀を地面に投げ捨てながら、「俺の本分は銃だし」と呟く。
と、イタ王がこっちに走ってくる。
無視するなよ、虫だけにと心のなかで突っ込みながらも、日帝はイタ王の願いを了承して、さっき投げ捨てられたばかりの木刀を拾ってイタ王に渡す。
構えに入りながら、日帝は少し心配になる。
イタ王は戦闘があまり得意ではない。先の大戦ではギリシャどころかアフリカにすら負けて先輩が呆れ返っていた。
そして、彼の武器はソ連と同じく銃だ。結構前に触ったことはあるはずだが正直散々だったのを覚えている。
そんなことを考えているうちに、審判役のソ連がやる気無さそうに声を上げる。
日帝は慣れた様子で木刀を構えてイタ王を視界に入れる。
イタ王は日帝の様子を真似て木刀を同じように持っていた。
ただ前よりかは安定している様子なので日帝は安堵する。少なくとも構えは大丈夫そうだ。
そして数秒後。
ソ連の声で、日帝はまずは近づこうと地面を蹴る。まぁ相手はイタ王だし、程々に―
顔を上げた瞬間、数メートルは先にいたはずのイタ王が目と鼻の先おり、日帝は咄嗟に防御姿勢をとる。
日帝はイタ王の軽々とした、けれど鋭く重い攻撃に耐えることで精一杯で、返事をすることすら出来ない。
連撃が途絶えて後ろに下がった隙を突き、日帝は肩に一撃を入れようとするが、イタ王はふわりと宙返りをしてかわし、日帝の後ろに回って反撃をしてきた。
流石の日帝、すぐにイタ王の攻撃を受け流すが、いつもとは明らかに違うその動きに日帝は困惑を隠せなかった。
いつもなら横から色々野次を入れてくるソ連も、今は何も言ってこなかった。
ちらりとソ連を覗くと、ソ連も目を丸くしてイタ王を見ている。それはそうだろう、木刀どころか銃でさえ自分に劣っていた奴が、一二を争う剣の達人である日帝と互角に戦っているのだから。
確かに、彼は実力がないわけではない。しかし、こ こまでの精度で、ここまでの力強さで、木刀を操るイタ王を、日帝は知らない。
明らかに、空気が違う。
目つきが違う。
軽く礼をした後、日帝は、地面に倒れ込む。こんなに本気で戦ったのは久しぶりだ。肩で息をしながら、日帝は顔を上げてイタ王を見る。
まるで軽くジョギングをした後のような調子で話すイタ王に、日帝は呆気にとられる。
ソ連も同じなようで、
曰く、なんか体がぶわーってなって脳がふわってなって、なんかいつの間にか体が動いてた...らしい。
何を言ってるか全くわからないのはさておき、イタ王には本当に心当たりは無さそうだった。楽しくなってきたのか、木刀で素振りを何十回と繰り返すイタ王を少し遠くから見ながら、日帝とソ連は疑問を口にする。
手合わせの時に感じた、あの冷たい空気。
まるで操られているかのような足の動き。
そして、あの目つき―
イタ王と長年の付き合いである二人が違和感を覚えるには、十分すぎるものだった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。