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第5話

想いを重ねて。(合宿最終日)
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2024/12/27 13:52 更新
合宿の最終日、最後の練習試合として梟谷と試合をしていた烏野高校は僅差で負けたが日向と影山が新しい速攻を見つけることが出来た試合にもなった。
日向翔陽
日向翔陽
蒼來、今の見てたか!!
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
見てたよ、凄い!
新しい速攻だね
日向翔陽
日向翔陽
おう、影山とまたバレーが出来る!!
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
(良かったね、翔陽)
嬉しそうに抱き合っている蒼來を見詰めている赤葦の胸には、少しの嫉妬心が芽生え周りの人に気付かれないように拳をグッと握りこんでいると此方を見てきた日向は勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
赤葦京治
赤葦京治
(日向・・・分かっててやってるな)
日向翔陽
日向翔陽
(蒼來の中では俺が上っす!)
ネット越しに火花を散らしている赤葦と日向、そんな事も知らずのんびりとしている蒼來は男同士のプライドを掛けた戦いが繰り広げられている事に気付かないのだ。
合宿の打ち上げでバーベキューをする事になりBBQグリルの上で野菜や肉を焼く係になった蒼來は、同じマネージャーである清水と谷地、他校の雀田達の分も焼き終え一人木陰に座りワイワイと賑わっている様子を見ていた。
熱いグリルの前に立っていたから火照っている身体を冷まそうと、着ているTシャツの襟元をバタつかせているとペッドボトルを持った赤葦が歩み寄ってきた。
赤葦京治
赤葦京治
一瀬さん、大丈夫?
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
赤葦さん、これぐらい大丈夫ですよ!
ニコッと笑みを浮かべる蒼來だが、その柔らかそうな頬は赤らんでいて少し心配になった赤葦は腕を伸ばすと頬に手を触れさせた。
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
っ・・・!!
赤葦京治
赤葦京治
どう、冷たいかな?
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
冷たいです・・・でもちょっと、恥ずかしい気もしますけど
赤葦京治
赤葦京治
大丈夫、皆こっちを見てないから
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
(なら、良いかな)
そっと視線を背後に向けると皆バーベキューに夢中で此方に視線を向ける人の姿は見えない、赤葦とこんなに親密になっている所を他の誰かに見られたらと思うと恥ずかしさや照れが心の中に溢れてしまう。
今も赤葦が隣に居るだけでこんなに心臓は早く脈打っている事を感じられたくなくて蒼來は彼の瞳を見れずに居た、少し消極的な雰囲気を感じ取った赤葦は頬から手を離すと隣に座り口を開く。
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
(あっ、手が離れちゃった)
赤葦京治
赤葦京治
一瀬さん、昨日の事を覚えてる?
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
覚えてます、夜ですよね?
赤葦京治
赤葦京治
うん、場所は体育館入口で
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
分かりました
赤葦京治
赤葦京治
じゃあ、俺は木兎さんの所に戻るから。
これで水分補給して
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
あ、ありがとうございます
少し離れた場所で梟谷のキャプテンでもある木兎の騒がしい声が聞こえ始め赤葦は名残惜しい気持ちを感じながら、蒼來にペッドボトルを渡すとその場から去ってしまう。
残された蒼來は渡されたペッドボトルを見詰めながら、今夜何かが変わるような気持ちを感じていると清水に呼ばれ戻るのだった。
空が闇へと包まれそれぞれが就寝時間まで思い思いに過ごしている中、一人マネージャー達が集まっている部屋から抜け出した蒼來は人気のない体育館前の入口のベンチに座っていた。廊下の光は消灯されていて暗闇に包まれているから、少しだけ一人ぼっちなことに怖さを感じながらも赤葦が来るのを心待ちにしていた。
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
(うぅ〜、暗いから怖いなぁ)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
(でも、赤葦さんもそろそろ来る頃だよね)
窓から差し込む月明かりを眺めていると、廊下の奥から足音が聞こえ始め視線を向けると慌てた様子で駆け寄ってくる赤葦に蒼來は首を傾げた。
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
あ、赤葦さん?
赤葦京治
赤葦京治
ごめん一瀬さん、少し俺と隠れて欲しい
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
えっ?
木兎光太郎
木兎光太郎
おーーい、赤葦!!
赤葦京治
赤葦京治
ちょっと来て
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
えっ、あっ・・・
バタバタと騒がしい足音が聞こえ始めアタフタしていると赤葦に腕を引かれ階段横にあるロッカーに入り込む、赤葦の名を呼びながら体育館前に現れたであろう木兎は当たりを見回している気配をロッカーの中から感じる。
狭いロッカーの中で蒼來を抱き締めながら扉の空気口から外を覗いている赤葦、力強い腕に抱き締められながら胸元に顔を埋めて呼吸を止めている蒼來の頭はパンク寸前。
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
(ひゃ~~~、もう無理だよ////)
赤葦京治
赤葦京治
(一瀬さん、耐えて)
木兎光太郎
木兎光太郎
おっかしーなぁ、この辺りに来たように見えたんだが
ロッカーへと歩み寄ってくる足音に蒼來は、この状況に我慢の限界が近づいているのを感じながらグッと赤葦のTシャツを握り必死に目を閉じた。空気口から見える木兎がロッカーに手をかけようとしたその時、思ってもみなかった人物が現れた。
日向翔陽
日向翔陽
あっ、木兎さん!
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
(えっ、翔陽!?)
木兎光太郎
木兎光太郎
おう、日向!
どうかしたか?
日向翔陽
日向翔陽
蒼來と話したい事があったんですけど、姿が見えなくて
日向翔陽
日向翔陽
木兎さんは?
木兎光太郎
木兎光太郎
赤葦が居なくてな、探してたんだが見つからないんだ
日向翔陽
日向翔陽
じゃあ、あっちの方を見に行きませんか
木兎光太郎
木兎光太郎
おう、そうしようぜ
楽しげな会話をしながらその場から離れてゆく日向と木兎の気配に、ホッと息を吐き出した赤葦はロッカーの扉を静かに開け蒼來の身体を抱き締めながら外に出る。
赤葦京治
赤葦京治
ふぅ、ごめんね一瀬さん
赤葦京治
赤葦京治
大丈・・・っ!
「大丈夫」と言いかけた赤葦の息は詰まった、何故なら胸元にしがみついている蒼來の顔は真っ赤に染まりプルプルと肩を震わしているからだ。
赤葦京治
赤葦京治
一瀬さん?
赤葦京治
赤葦京治
息止めなくていいんだよ
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
ぷはっ・・・はぁ、はぁ
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
心臓、止まるかと思いました
肩を激しく上下させながらゆっくり息を吸い込んでいる蒼來の背中を撫でている赤葦は、彼女の手を引きベンチに座らせると口を開いた。
赤葦京治
赤葦京治
合宿で初めて会ったばかりなのにこんな事言うの変だけど
赤葦京治
赤葦京治
君に・・・一瀬さんに一目惚れしたんだ
赤葦京治
赤葦京治
一瀬さんは、どうかな?
真っ直ぐに蒼來を見詰めてくる視線と嘘偽りの無い言葉が蒼來の心を高鳴らせて脈が早く打ち始めた、赤葦に「異性として見て欲しい」と言われた日から考えていたが蒼來の心はとっくに決まっていた。
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
私も、赤葦さんに一目惚れしてたんだと思います
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
あの時、初めて声を掛けてくれた時から////
赤葦京治
赤葦京治
お互い他校で会えない時も多くなるけど・・・良いのかい?
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
はい、赤葦さんとなら乗り越えられるように頑張ります!
笑顔を見せながらそう言葉を呟いた蒼來が、何だか頼もしく見えて嬉しい赤葦はそっと華奢な身体を抱き締め肩を顔を埋めながら呟いた。
赤葦京治
赤葦京治
好きだよ、一瀬さん
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
私も、好きです////
背中におずおずと回された細い腕を感じながら、赤葦はこの一時がもう少しだけ続くようにと願わずにはいられないのだった。
合宿最終日を終えて宮城へと戻ることになった烏野高校、お互い別れや励みの言葉を交わしている中で蒼來と赤葦は一夜明けてより一層恋慕が深まっていた。
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
家に着いたら連絡しますね
赤葦京治
赤葦京治
うん、待ってるよ
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
その・・・何だか離れ難いですね
赤葦京治
赤葦京治
俺も離れたくない。
このまま連れ去りたい気持ちがある
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
ふふっ、でも大会で勝ち進めば会えますよ
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
それに、滅多に来れないけど東京の方に会いに行きます!
赤葦京治
赤葦京治
その元気さがあれば、一瀬さんは大丈夫だよ
清水潔子
清水潔子
蒼來ちゃん、そろそろ行くよ!
遠くから聞こえてきた清水の声に返事を返し赤葦から離れようとすると片腕を引かれ少し強めに抱き締められた、突然の抱擁とその光景に周りに居た生徒達が目を見開いている。
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
あ、赤葦さん?////
赤葦京治
赤葦京治
一瀬さんの事をずっと想ってる
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
っ・・・私も同じです////
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
毎日連絡もしますからね
赤葦京治
赤葦京治
うん、待ってる
漸く顔を見せてくれた赤葦の表情はほんの少しだけ憂いを帯びているように見えた蒼來は、笑顔を浮かべ背伸びをすると頬にキスを落とした。その行動に目を見開いた赤葦が頬に手を当て呆然としている様子に蒼來は言葉を呟く。
市瀬蒼來(いちのせ そら)
市瀬蒼來(いちのせ そら)
好きですよ、赤葦さん!
花が綻ぶような笑顔が赤葦の心に焼き付いて離れなくなったのは烏野高校が乗ったバスが出発してからだ、一目惚れから始まった恋は新たな関係を作り二人の恋は形を成していくのだった。

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