眩しい日差しと木々の間から聞こえて来る蝉の声に清々しい程の青空が映えている、合宿の半分が過ぎた日ではあるが相変わらず体育館の熱気と部員達の掛け声は変わらない。
そんな中、烏野高校男子バレー部に所属している変人コンビである日向と影山が衝突をしており険悪なムードが流れていた。
日向と幼馴染である蒼來は心配していたが、彼女の前では嫌な顔を出さず変わらない態度で接してくれる。
仲睦まじい雰囲気が漂っている日向と蒼來、普通の幼馴染ならば背中に飛びつくと怒るはずなのだが何だかんだお互いを信頼しているのを離れた所から見ていた赤葦。
意外なライバルの出現に想い人である蒼來にどう距離を縮めようか考えていると、マネージャーである雀田と白福の会話が聞こえて来た。
そう思いながら未だにじゃれあっている二人を見詰めていると、此方の視線に気付いたのか日向が赤葦を見ると勝気な表情と笑みを浮かべた様子に赤葦の中で『負けたくない』という思いが芽生えた。
離れた距離に居るのにお互いの視線は逸らされずバチバチと火花が散るように睨み合っている、そんな事を知らない蒼來は急に無言になった日向の視線の先に居る赤葦を見付けて小さく手を振るのだった。
練習が行われる中、日向と影山のコンビネーションが上手く行かず口喧嘩が度重なるのを見ていた蒼來は少しだけ寂しく感じていた。烏野高校男子バレー部に入ってからの日向は、中学の時より活き活きしててセッターとしての力をメキメキとつけているのを隣で見てきた蒼來は凄く嬉しかったのだ。
だが、今は日向と影山にとっては大事な時期なのかもしれないと思うと『喧嘩を止めて』なんて言えるはずもなくて見守るしかない。
そんな事を一人考えながら歩いていたからか、足元の小さな段差に気付かず足を引っ掛けてしまい持っていたカゴを落としてドリンクボトルを床にばら撒いてしまう。
烏野のメンバー分のボトルが四方八方に転がってしまい蒼來は慌てて床に膝を着きながら拾っていると、少し遠くに転がったボトルを拾う掌に気付き視線を上げると赤葦が立っていた。
ボトルを拾う手を止めずに話す蒼來の声を聞いていると不意に零れた『異性としての好きとは違う』と言う言葉に、赤葦はハッとして蒼來の横顔を見詰めているとカゴにボトルが全部入り深い青色の瞳が不思議そうに見上げてきた。
最初は赤葦の言っている言葉の意味が分からず、思考が停止していたがゆっくり噛み砕くと意味が分かった瞬間に蒼來の頬は桃色に色付いた。アワアワと唇が震え何か言いたいのに言葉が見つからない蒼來は固まっていると、頬を赤らめた彼女の様子を見て嫌がられていないと感じた赤葦はそっと床に置かれている細い指先に指先を触れさせた。
赤葦の言葉に蒼來の胸はトクンと音を立てた、触れられるのは嫌では無い寧ろもっと近付いて彼の温もりを感じてみたいと思う程に心は赤葦に向いている事を改めて感じる蒼來。
言葉にするのが恥ずかしくて、蒼來は頭を上下に動かすとそれを肯定と受け取った赤葦の喉仏は音を鳴らしてすっと大きな掌が頬に伸ばされた。
恐る恐ると言ったように蒼來の表情を見詰めながら伸ばされた掌は、少し固くて熱い体温が伝わってきて蒼來の呼吸が上手く出来ない。
お互いに心の中ではアワアワと緊張しまくっていてお互いの視線は合わないが、ふと赤葦の方を見ると表情が硬くなり口元を引き結んでいる様子に蒼來は目を見開く。
頬から離れていく掌に名残惜しさを感じながら目で追っていると、不意に頭をポンポンと撫でられ受け入れていると赤葦が口を開いた。
背中を向けて体育館ヘと戻る赤葦を見送りその場に残された蒼來は蹲ったまま動けずに居た、あの時に触れた赤葦の温もりがまだ頬に残っていて恥ずかしさと大きくなった想いを抑えるのに必死になった。
その数十分後、体育館に戻ってきた蒼來は隣のコートで試合をしている赤葦の姿に胸が音を立て早く明日になれと願うのだった。

















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。