……ああ、ついに地獄の時間が来てしまった。
そう、体力テストだ。
俺は運動がめっぽう苦手だ。
いくらナルシストの俺でも自惚れる余地がないほど苦手だ。
わかりやすく言うと、クラスに1人はいる「マラソンが飛び抜けて遅いので最後に1人でゼーハー言いながらクラス全員からの温かい応援を浴びる」というあのポジション。
それが俺だ。
マラソンに限らず、例えば投げたボールは必ず明後日の方向に飛んでいくし、水泳だって不格好なクロールで25m泳ぎ切るのがやっとだし、球技でラケットを持てば半分は空振りする。
クソッ、超絶天才イケメンの俺様がなんでこんなに運動できないんだよ……ってまたやっちまった。
体育の先生は随分と緩い雰囲気だ。
近くの人と組めという話だから俺も近くの人を探す。
すると、早速声がかかった。
学級副委員長の早乙女だ。
ちょうど俺もペアを探していたところだし、ありがたく組ませてもらおう。
……しかし、こいつめちゃくちゃ運動神経良さそうなんだよな。
程よく筋肉付いてるし、日焼けもしているし。
俺の絶望的な運動神経を見られるの、ちょっと恥ずかしいんだが……。
早乙女がマットの上に寝転んで、その足に俺が全体重を乗せて押さえる。
しかし、早乙女は不満げにそう言った。
俺様はスリムでスタイル抜群だからな……と言うわけにはいかず、とりあえずしらばっくれてみた。
ああああああああ!
やらかしたああああああ!
つい調子に乗ってしまった!
人より代謝がいいから太りにくい体質なのは本当だが!
これじゃあ「俺はいくら食べても太らないから☆」って言っているようなものじゃないか!
いい加減治れよ俺のナルシスト!
タイマーがスタートして、みんながそれぞれ上体起こしを始める。
案の定、早乙女はとんでもないスピードで上体起こしをしていた。
やっぱり運動得意なんだな。
実は腹筋バキバキだったりして。
結果。
バケモノかよ。
単純計算で1秒1回以上だぞ?
もう人間業じゃないって。
俺は先生の声とともにマットに寝転び、大きく深呼吸をする。
当たり前だが、俺の上体起こしの起こしのスピードは早乙女とは全然比較にならないほど遅い。
おそらく早乙女の半分くらいだろう。
早速疲れてきて、どんどんペースが落ちていく。
これでも頑張ってんだよ、俺は。
そう言い返すこともできないくらいに頑張ってんだよ。
俺はマットに大の字に寝転んで大きく息をした。
……ごもっとも。
超絶スマート体型の俺は脂肪が少ないが、運動してないから筋肉もないんだよな……って前半カット。
体力テストはまだまだ続く。
これだけでも既に地獄なのに、これからどうなるんだろうな。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!