ー学園長室
ああ。嘆きの島の番人は、今でこそ都市伝説のような扱いをされておるが……
かつて『魔法士』が『魔法使い』や『魔女』と呼ばれていた頃、奴らの存在に恐れぬ者はいなかった。
「魔法使いが我を忘れて力に溺れる時、
嘆きの島より罰が下る」……とな。
我が王家に伝わる古文書によれば、かの組織の歴史は非常に古く、起源は神々の時代まで遡る。
まだ魔法とブロットの因果関係が
解明されていなかった時代。
人々によってオーバーブロットとは、
突然降りかかる厄災そのものだったという。
その厄災を嘆きの島に封じ、人々に平和をもたらしたのがジュピター家の祖であり……
厄災が再び世に解き放たれぬよう、番人となったのがシュラウド家の祖である……と記されていた。
それもう歴史じゃなくて神話じゃない?
スケール大きくて、けーくんちょっと
ついていけなくなってきた……。
だが探究心旺盛な人の子らは、魔法の研究をやめなかった。
そして時は流れ、いつしか魔法は
安全な技術となり……
ルキやラナたちのような『魔法使い』や『魔女』は、『魔法士』となった。
今では魔法士免許は国際資格。人々の暮らしに貢献する、国際的にも認められた存在じゃ。
魔法を悪用し、人々を苦しめる魔法士を取り締まる法や政府組織も次第に整備されていき……
いつしか嘆きの島の番人どもは、歴史の表舞台から姿を消した。
だが、彼らは嘆きの島で厄災……ブロットの研究をし続けていた。非政府組織『S.T.Y.X.』として。
イデア・シュラウド……彼がシュラウド家の子息であることは我々も把握していたが……
シュラウド家と『S.T.Y.X.』の密接な
繋がりについては初耳だ。
私はあらゆる魔法史の文献に目を通した自負がある。しかし、そんな記述を見た記憶はない。
(……ワタシと姉さんは、いろんな文献を見てきたから…)
(その記述については見た記憶は、あるんですけどね〜……。)
まあ……魔法でネクを洗脳した“奴”に、ワタシと姉さんは人間から悪魔にされてしまったわけなんだし^^;
それは人間側に残っている文献だけの話じゃろ?
妖精族と人間は、かなりの年月交流を
断っておったからのう。
国や種族が違えば、伝わる内容も違う。
そして、書物に残らぬ真実も多くある。
何者かの思惑によって捻れ歪められることも少なくない。それが歴史というものよ。
書物に残らない真実と、捻れ歪められられた歴史……
なんだか、曖昧模糊な話だよね……。
うん……そうだね。
……学園長は、イデア・シュラウドが
『S.T.Y.X.』と関わりがあることを
ご存知だったのだろうか?
さあね。……あの学園長が、『S.T.Y.X.』と関わりがあることを…
ご存知だったかどうかは、ワタシは知りませんがね。
もしご存知であったなら……
シュラウド家を通し、このような事態を回避できるよう働きかけることはできなかったのだろうか……
どうだろうな。だが、知っていたとしても番人どもを止めることはできなかっただろう。
……『S.T.Y.X.』は、
オーバーブロット経験者であるリドルたちを捕らえてなにをするつもりなんだ?
リリアさんのお話を聞く限り、丁重に
おもてなしされているとは思えませんが。
良くて精密検査、悪くて彼らの実験対象。最悪の場合、すでに生きては……。
おい!
冗談でもそんなこと言うのやめろよ、ジェイド。
………………………。
っていうかさ……ウミウシ先輩たちの話
聞いてて思ったんだけど。
アイツら学園をあちこち派手にぶっ壊して、目撃者もすげーいるじゃん。
そう言われてみれば、確かにそうですよね。
動画撮ってたヤツとかもいるっしょ。
全然組織を秘匿する気なくね?
それとも、そんくらい後から帳消しにできる手段があるってこと?
……うーん………どうなんでしょうね。
………………。
なーんか、嫌な感じッスね。レオナさんたちの心配より、自分たちの命の心配したほうがよさそうッス。
(おーい、ラギー……言い方^^;)
ブッチの物の言い方は訂正したいところだが、ある意味正しくもある。
嘆きの島の所在地がわからぬ以上、
我々は彼らを追う手立てがない。
……そうですよね。
ま、こっちは嘆きの島の所在地が既に分かっているのだけどね?連絡用端末に付けた発信機が、
アズールさんの居場所を特定しているんだし。
君たちはそれぞれ寮に戻り、寮生の点呼。被害状況を確認し、報告するように。
はい。
…………………。
(……あの様子だと、ルークさんは嘆きの島に行くつもりなんだろうね。)
……アイリス。そろそろ、ワタシは『S.T.Y.X.』の研究所に行くから準備をしておいて。
わかった。……場所は、もう分かっているの?
もちろんよ。レオンとカイリが向かってる頃だと思うわ。
~一方、その頃…
ー海上
……ルキが連絡用端末に付けた発信機から出てる反応は、ここみたいです。
ということは、つまり……この下にブロットの研究をしている場所…
『S.T.Y.X.』の研究所があるってことか……。
恐らく、そういうことだと思います。
………けど、前方には『S.T.Y.X.』の特警班がいるせいで…
侵入するにも、正面から突っ込んで行くのもダメだし……どうするかなんだけどな。
特警班がいるせいで、正面から侵入するのは難しそうですね。
……どうやって、侵入します?お兄様。
…………。
……正面から侵入するのは無理があるし、別の場所から侵入できる場所を探すか。
行くぞ、カイリ。
はい、お兄様。
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編集部コメント
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