第13話

矛と盾
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2023/11/12 13:43
美味しそうなハンバーグ。
溢れる肉汁に、翔太は目を光らせた。

大きく切った一切れを、大きな口で頬張る。
翔太
…うわっ!
うぅんまぁっ!!
涼太
…!
翔太、口についてる…笑
涼太が笑って翔太の口を拭うと、翔太は目を閉じて大人しく待つ。
翔太
んー
涼太
…よし、とれたよ?
翔太
ありがと!
嬉しそうに笑う翔太。

…翔太は不思議だ。
親が殺されたってのに、笑っている。

いくら愛されていなかったとはいえ、さすがに狂っているのではないだろうか。
死人を見るのは、そんなに簡単な事か?
…?
どうした、食べないのか?
目の前の肉を見る。

デミグラスソースが、あの赤黒く変色した、液体に似ている。
それに包まれた肉は、魂を失った人を思わせて。

…今、思い出すんじゃなかった。
大介
……うっ
気持ちが悪い。
大介大丈夫か!?
…風にあたろう。
照が俺を支えて、立ち上がった。
涼太
…後のことは任せといて。
大介くんが良くなるまで、いてやってね。
分かってる。
翔太が首を傾げて俺を見た。

…これじゃあ、どっちが不幸なのかなんて、分からない。
大介
……すぅ…はぁ…
そういうの、声に出すんだ笑
水の入ったペットボトルを渡されて、大人しく受け取る。

…何だか、バカみたいだ。

あれだけ殺してほしいと願っていたのに、気持ち悪いと外に出て、水を飲んで心を落ち着かせる。

俺は、何がしたいんだろう。
大介
…照
はい?
だから、その優しい瞳で俺を見るなよ。

勘違いする。





…俺が死んだら、悲しんでくれるかなって。



大介
俺が18歳になったら、殺してくれんの?
……そういう、約束だろ?
少し、言い淀むのは、なぜ。



そんな疑問を口に出す勇気は、俺にはまだなくて。
大介
…ねぇ、何で18なの?
…大人になってからの方が、殺した時
楽しいかなって。
大介
なら20とか30とかで良くない?
はやく殺してほしいんじゃなかった?
睨みつけると、照は親のように微笑んだ。



…その発言は、明らかに矛盾しているように思えた。


     「大人になってから殺したい」

       「はやく殺されたい」


よく言えば、お互いの意見の真ん中を取っている。

悪く言えば、矛盾。
…気分は良くなった?
大介
…良くはなった。
照は矛。
きっと、何でも突き抜くことができる。


そして俺は盾。
…でも、には負けるだろう。

その事実は、まるで矛に、
「いつでも殺せるけど、様子を見ているだけだ」
と言われているかのよう。

翔太
だーいーすーけー!
店から翔太と、それに続いて涼太も出てきた。
大介
…翔太!
翔太
今日お前ん家泊まってもいい?
大介
へ?
慌てて照を見てみると、驚いたような顔をしていたが、呆れたように笑った。
…お前の差し金か?笑
涼太
いーえ?
俺は何も知りません〜笑
わざとらしく笑う涼太に、照はいつも通り笑う。


俺はいつ殺されても、きっと、いい。
照が飽きるまで、そばにいよう。





俺が殺される、その時まで。


矛盾が壊れる、その時までは。










「矛盾」のエピソード、皆さんご存知ですか?


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その矛は何でも突き抜く。
その盾を突き抜けるものはない。

なら、その矛でその盾を突き抜いたら?

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といった話です。

この話を知った時、面白いなと思ったんですよ

なんていう、私の独り言でした笑



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