廊下を歩くだけで、身体のあちこちが悲鳴を上げる。
腕は重く、膝は笑い、腰は鈍痛。モップも雑巾ももう片付けたはずなのに、まだ肩に重さがぶら下がっているような錯覚に襲われる。
エンジンがぼそりと声を漏らした。傘を肩に担いでいるが、その歩き方はどう見ても老人だ。
二人して同時に立ち止まり、そっと腰を押さえる。まるで戦場から帰還した兵士みたいに、どちらも姿勢を真っ直ぐに保てない。
エンジンが天井を見上げるようにして言う。
そんなくだらない掛け合いをしているうちに、少しだけ足が軽くなった気がした。笑うと、不思議と疲れがまぎれる。
けれど、足取りはまだ重い。廊下をずるずる歩いて、食堂の扉を押し開けた瞬間。
真っ先に声をあげたのはリヨウだった。
テーブルに足を乗せて、パンをかじりながらこちらを見ている。口元にパン屑をつけたまま、目をきらきらさせて笑った。
私は額に張り付いた髪を乱暴にかき上げて、椅子に腰を下ろす。
あまりの疲労で、椅子に吸い込まれるように沈み込んだ。
ザンカもこちらを見て、腕を組みながら呆れたように言う。
私が抗議すると、エンジンが椅子に腰をずり落とすようにして座り込み、傘をだらりと床に預けた。
と言い、ザンカが眉を寄せる。
リヨウは、テーブルを叩きながら大笑いだ。
私の突っ込みに、リヨウはさらに爆笑する。椅子から転げ落ちそうになりながら、涙を拭っていた。
ザンカは溜め息をひとつ吐き、けれどふと私とエンジンを見比べて、少し柔らかい声で言った。
私とエンジンの声がぴったり重なった。
食堂に響いたその瞬間、リヨウが机を叩きすぎてパンを落とすほど大笑いした。
私は呆れながらも、少し頬が熱くなるのを感じた。
エンジンはパンをつまみ、ぼそっと言った。
言い合いながらパンを噛みちぎるエンジン。リヨウとザンカの笑い声が混ざって、食堂はあっという間に騒がしくなった。
雑用のあとに残ったのは、腰の痛みと、どうしようもない程の、くだらない笑いだった。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!