窓の外が黄昏色に染まる頃。
頼まれていた仕事が終わり、
その疲れを癒す様に伸びをする。
纏めた資料を手に取るが、
中々腰は上がってくれない。
それもそうだろう。
この仕事を私に任せた当の本人、降谷さんは
もうとっくに現場から帰って来ており
自分のデスクでパソコンと睨めっこしている。
ただの喫茶店員だと思っていた相手が
まさかの公安警察の警部だなんて誰が想像できたか。
喉が詰まり、また涙が出そうになる。
公安警察が、たかが恋愛如きで傷心し
こうして仕事に支障をきたしている
なんて知られたら、
お咎めも超えて呆れられるだろうな。
不意に名前を呼ばれ、思わず顔が上がる。
意識を会話に向けると、
やっと周りが少々ザワついているのに気が付いた。
気付けば定時も過ぎていたらしい。
仕事を終わらせた人達が今夜の飲み会について
会話を弾ませていた。
笑顔にお礼を言った先輩は、
元いた人の元へと帰っていく。
焦って謝る私に目もくれず、
手に持っていた資料を取り上げる降谷さん。
パラパラと私から受け取った資料を捲りながら、
自分のデスクへと戻って行った。
考えれば分かる事なのに、
思わず聞いてしまった。
降谷さんが飲み会に参加しないことも
分かっていたはずなのに
心のどこかで浮ついた考えをしていたんだ、きっと。
吐いた溜息が誰にもバレない様に、
両手で顔を覆った。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。