来未ちゃんの名前は、素敵だ。
なにせ、来る未来、である。
幼い時の私は、漢字などわかるはずもなく、ずっと植物の「くるみ」なのだと思っていた。
来未ちゃんのお母さん、お父さんは、来未ちゃんの幸せな将来を願ってこの名前をつけたに違いない。
だけど、あの子は果たさなかった。いや、果たせなかったのか。
そうあの子が私を呼んでくれるたびに、嬉しかった。
キラキラ光るような、でも優しい笑顔。
その名前を口に出すたびに、息苦しくなる。
こんなに苦しいのに、
何度もあの子がまた笑顔を見せてくれることを願っているのに、
あの声を聞かせてほしいと強く思っているのに、
神様はなんて薄情なんだろう。
そう、あの子は言っていたのに。
あの子は貴方をずっと信じていたのに。
なんでですか。なんであの子の使命を果たさせてあげなかったのですか。
貴方が本当に救うべきなのは、来未ちゃんのような人ではないのですか。
神様。私は貴方のことなんて一生信じない。
あの子を救えない貴方は、ただ名乗るだけの神だ。
目を閉じると、蘇る思い出があった。
あれは卒園式のことだった。
私は感情をなかなか表さない性格だ。
卒園のとき、これでみんなとしばらく会えなくなる、という時になっても、涙は出て来なかった。
だが、決して悲しくなかったわけではない。
本当は周りの子たちがそうしているように、泣きたい気分だった。
でも、私は来未ちゃんにまた会えればそれで良かった。
来未ちゃんとはこれで終わるような気がしなかったから。
でも来未ちゃんは違った。
そう言って泣き出したのだ。
来未ちゃんは私とは反対に、感情がすぐに表に出る。
そんな所がみんなに好かれたのだろう、いつも
来未ちゃんの周りはキラキラした子でいっぱいだった。
そういって来未ちゃんはニカッと笑った。
これが私たちの交わした最後の会話だなんて。
これが、私が見たあの子の最後の笑顔だなんて。
また会えるなんて、嘘だ。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!