私は入谷から逃げ、無我夢中で走った。
とにかく誰もいないところに行きたい。
こんな顔じゃ誰にも会えない。心配されるから。
特に美晴くんには…
そう考えながら下を向いて走っていたせいで
誰かにぶつかってしまった。
ドン!
この声…聞き覚えのある声…
誰かすぐわかった。だけど顔をあげられない。
今 会っちゃダメなんだよ。
かといって逃げるのもおかしい…
どうしよう。
私は美晴くんにばれないように
涙を拭き ゆっくり深呼吸をして顔をあげた。
やっぱり気付かれてるよね。
でも隠し通さないと。
あの事はばれたくないから…
「なんかされた」という単語でさっきのことを
思いだし私の目には涙があふれでた。
すると美晴くんはため息をついて
私の手首を掴みどこかへ連れていく。
ついたのは誰もいない教室。
昨日ふたりでいた教室だ…
美晴くんは教室の中に入り、ドアを閉めた。
入谷にキスされました。…なんて言えないよ。
だってふたりは親友だから。
私のせいで仲が悪くなったら…
私はしばらく沈黙を続ける。
すると…
美晴くんが大声を出すなんて…
すごくビックリした。
そっと美晴くんの顔をみあげた。
美晴くんは今にも泣き出しそうな顔だった。
私はこの悲しい顔を知ってる。
裏の時も俺だった…
まさか……でも表情とかはいつもの美晴くん…
なんで?どういうこと?どうして?
そう言うと美晴くんは私を傷物をそっと扱うように
丁寧に撫でてくれてそして私を抱き締めてくれた。
言ってしまうのは怖い…
ふたりの仲が悪くなってしまうかもしれない
でも美晴くんに迷惑はかけたくない
だから私は_
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!