第90話

番外編(秀介)-両親の容態-
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2020/04/06 14:58
秀介祖母
すみません。先程連絡があった江藤
佑介と桜の家族です。
看護師
少々お待ちください。
看護師さんは祖母と何かを話していた。
でもまだ俺は話の内容を理解出来ていなかった。
俺は祖母に連れられて歩く。
病室の前にたつと俺は祖母の顔を見た。
祖母は少し緊張したような表情だった。
秀介
おばあ、ちゃん…?
不安になった俺はそう話しかけると祖母は微笑んで“行こうか。”と言った。
祖母がゆっくりと扉を開けるとベッドには母が横たわっていた。頭には包帯が巻かれていて幼い俺でも大変なことがあったことはわかった。母の横には医師がたっていた。先生は俺たちに気づくと会釈をした。祖母も会釈をする。
医者
桜さんのご家族の方ですか。
秀介祖母
…はい。私は桜の母です。
この子は桜の息子です。
医者
そうですか。
少しの間があったあと先生は口を開く。
医者
桜さんですが、かなりの重症をおっています。事故の際、頭を強くぶつけたようでまだ意識は戻っていません。
秀介祖母
桜はいつ、目覚めるんでしょうか、
祖母の表情はどんどん暗くなっていく。
医者
いつ目覚めるかはわかりません。
明日覚めるかも知れないし、一生このままかもしれない。
秀介祖母
そう、ですか…、
祖母はぎゅっと俺の手を握りしめる。
不安や悲しみが祖母の手から伝わってきた。
ただ、俺はずっと疑問に思っていたことがあった。
秀介
…パパは?
そういうと一気に空気が重くなったような気がした。幼い俺でもわかるぐらい。
秀介祖母
先生、佑介さんは…
医者
非常に申し上げにくいのですが、運ばれた際にはもう、手遅れでした。
秀介祖母
…そんな、っ、
祖母は口を手で抑え、膝から崩れ落ちた。
目からは涙が流れていた。
それを見た俺はとても不安になった。
秀介
おばあちゃん、パパは?
祖母の肩を俺はゆすっていると先生が俺の背に合わせ屈んで言った。
医者
お父さんはね、亡くなったんだ。
秀介
亡くなった?
医者
お空の上に行っちゃったんだよ。
秀介
パパは帰ってくるの?
俺がそう尋ねると先生はゆっくりと首を振った。
医者
もう会えないんだ。
秀介
やだっ。やだよっ。
俺の目からぼろぼろと涙がこぼれ落ちた。
先生は何も言わず優しく俺の頭を撫でてくれた。
祖母は俺をぎゅっと抱きしめてくれた。

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