第13話

待宵に、さよならを。 13
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2024/12/20 05:00 更新
─流星side─

次の日は、お店の定休日で家に1人やった。大ちゃんいるかもしれんけど…

──ピンポーン

·····?郵便?いいや。今日出るのめんどくさい…
それに、郵便って置き配にしてた気がする…
置いといてくれればいいや…

──ピンポーン

さっきから、情緒が分からなくなってた。大ちゃんがいるかもって、誰もいないところに向かって話しかけて、何も返ってこないと沈んで…

──ピンポーン

いやしつこ!!

何?誰?って、インターホンを確認すると、大橋くんやった。

「流星、開けて〜」

「ん?はい」

何しに来たんやろって思いながらドアを開けた。

「ごめん寝てた?」

「ううん」

「流星、なんも食べへんやろうなぁって思ったから、作りに来た」

「あ、別にいいのに笑」

「それに、大ちゃんがうるさいんよ笑」

「うん?笑」

「いや、朝起きたら俺の家にいて、流星んとこ行ってあげてって。ほんまにびっくりしたんやからな笑」

「ん?大ちゃんは今どこ?」

「また怖いって言うと思うけど、座りながら流星の足にしがみついてる」

「ひっ!?」

「あひゃひゃっ笑」

それはさすがにビビる!怖!!
西畑大吾
そんな叫ばんでも…
大橋和也
叫ぶやろ笑
大西流星
過去一怖かったかも笑
大橋和也
そうやろな笑
あ、お昼何がいい?
大西流星
んーー
西畑大吾
カレー
大西流星
········大ちゃんの、豚キムチ、食べたい
西畑大吾
えっ
大西流星
もう大ちゃんが作ったのは食べれへんけど、大橋くんなら、再現してくれるかなって
大橋和也
大ちゃんの味をか…
大西流星
無理か。無理よな、ごめん。無茶なこと言って
大橋和也
ごめんな…
俺大ちゃんの豚キムチ大好きやった。まだ指で数えられるくらいしか食べてないけど、大好きな味やった。もっと食べればよかったって、食べれなくなってから思うって、もう遅いんよな…
大橋和也
今日は、別の作っていい?
大西流星
うん。大橋くんのならなんでもいい
西畑大吾
·····っ、、はっすん
大橋和也
俺にもできないことはある
西畑大吾
いや、でも、豚キムチ作ってあげて?俺がレシピ教えるから。言葉で材料とか言うから
大橋和也
無理やって。作る人によって味は、違うんやから
なんか、、揉めてる??
台所の方で大橋くんが1人で喋ってる。
西畑大吾
はっすんの分からず屋!!
大橋和也
はぁ!?誰が分からず屋やって?
西畑大吾
作ってみないと分からんやろ?
大橋和也
俺が作ったの流星が食べて、味が違ったら、ショック受けるだけやろ
西畑大吾
だから、まずは作ってから
大橋和也
作らんってば。あっち行ってて
西畑大吾
行かん。はっすんが作るまでいるからな
大橋和也
流星の願いを叶えたいのも分かるけど、大ちゃんの言う通りに作っても、その味通りにはならないんや。流星は、気づくと思うで?なんか違うって
西畑大吾
っ、、俺に作れたら、作れたらっ
喧嘩、、終わった?静かになった…

かと思えば、何かを作る音が聞こえて、リビングのソファから、台所をジッと見ていた。

冷蔵庫開けて、何かを取り出して、包丁のある場所も知ってるかのように、迷うことなくあちこち開けてる。
大西流星
え、大橋くん?
大橋くん、この家で料理するの初めてよな?なんで分かるん?

大ちゃんが教えてるんかなって思いながら、台所に行くと、見た事のある材料が並んでいた。
大西流星
何作ってるん?
大橋和也
内緒。楽しみにしといて
なんか、、、豚の切り方とか、何かをする動作が、なんとなく大ちゃんに似てる気が…

俺はいつも、大ちゃんが料理をしているのをここで見ていた。「あっち行っててええよ?」って言われても、どの料理が完成するのか楽しみで、離れなかった。
大橋和也
ふふっ、あっち行っててええよ?
大西流星
えっ?
なんやろう、この既視感…

なんとなく、見ていたくて、見ていると、完成形が明らか豚キムチで、戸惑いを隠せなかった。さっきは、別の作るって言ってたのにって。
大橋和也
よし、できた
大西流星
豚キムチ……っ?!ちょっ!?
何?!なんで抱きしめて…っ!
大橋和也
はぁーっ、やっと触れたっ
大西流星
えっ?
大橋和也
流星っ、、っ、流星っ
大西流星
なっ
何言って…
なんで泣いて…
大橋和也
ごめんなっ
大西流星
·····っ、いい加減にしてっ!大ちゃんのフリとかっ、タチ悪いっ!
意味わからへん。やっていい事とやっちゃいけない事があるやろ。
大橋和也
フリやない。これ、食べてみて?
大西流星
はっ?
大橋和也
食べて、判断して欲しい
そんな事言われても…

とりあえず受け取って、一口食べた。
大西流星
っ、、この味っ
確認のためにもう一口食べたけど、あまりにも大ちゃんの味にそっくりで、泣きそうになった。
大橋和也
俺やって信じてもらえた?
大西流星
っ、大ちゃんが作り方教えたんやろっ?だから同じ味なんや
大橋和也
はぁーっ、ダメか。流星なら、俺の味分かってくれると思ったんやけどっ
そう言って顔を歪めた大橋くんは、力が抜けたように、床に倒れた。
大西流星
大橋くん?えっ、大橋くん!
大橋和也
ん…?おっ、びっくりしたっ。どうしたん?
大西流星
えっ
西畑大吾
あーあ、そんな長い時間はあかんのか…
大橋和也
何したん?
西畑大吾
んー、分からへん。気づいたらはっすんになってた
大橋和也
はあ?
西畑大吾
乗り移った感じ?さっきどうやったんやろ…
大橋和也
はっ?ちょ、意味が
混乱してる大橋くんは、立ち上がると、出来上がった豚キムチを見て、固まった。次いで、僕に「これは?」って聞いてきた。
大西流星
大橋くんが作ったんやろ?
大橋和也
いや、俺作ってへんよ。作らへんって大ちゃんと話してたし
大西流星
でも、これ作ったの大橋くんやで
西畑大吾
はっすんになってるうちに、俺が作った
大橋和也
待ってほんまに分からへん。あんた取り憑いたりできるん?
西畑大吾
できるらしいな
大西流星
大ちゃん、なんて?
大橋和也
あぁ。俺の体に乗り移って、これ作ったって
大西流星
全然信憑性ないんやけど
大橋和也
俺もない
西畑大吾
いや、豚キムチ作ってる時点で十分
大西流星
なら、大橋くんもう1回作ってや。豚キムチ
大橋和也
え?俺が?
大西流星
そう
西畑大吾
俺が教えるから。作ってみて欲しい
大橋和也
·····分かった
そう言って、大橋くんは再び豚キムチを作り始めた。さっきよりも包丁の使い方が手際良くて、あっという間に作ってしまった。
大橋和也
どう?
大西流星
·····違う。全然違う
大橋和也
嘘教えたん?
西畑大吾
いやいや
大西流星
作り方も、具も、全部さっきと同じなのに
西畑大吾
ほら!
大西流星
なんで…
なんでこっちは、大ちゃんの味がしないん?ちゃんと見てたけど、何も変わったもの入れてなかったし、見た目も全く同じなのに…
大西流星
っ、さっきの、、ほんまに大ちゃんやったん?
西畑大吾
そうやって言ってるやん。やっと信じた?
大橋和也
そうやって。やっと信じた?って
大西流星
·····そっか。俺が豚キムチ食べたいって言ったから、作ってくれたんやね
西畑大吾
流星に食べてもらいたかったから
大西流星
すっごくっ、美味しかったっ。大橋くんが作ってくれたのももちろん美味しいけど、こっちは、大ちゃんの味がして、僕が好きな味やったっ
西畑大吾
ふふっ、美味しかったなら良かった
大西流星
ごめん。怒鳴って
大橋和也
怒鳴った?
西畑大吾
豚キムチ作ったあと、流星に抱きついたんやけど、信じてもらえなくて、大ちゃんのフリとかタチ悪いって怒られた
大橋和也
そらそうやろ!見た目俺なんやから!
西畑大吾
触りたくて、我慢できなくて
大西流星
あ、今大ちゃんから説明された感じ?
大橋和也
うん
大西流星
俺大橋くんにセクハラされたかと思ったわ笑
西畑大吾
はははっ、セクハラっ笑
大橋和也
誰のせいでっ
西畑大吾
ひはははっ、はははっ、お腹痛いっ笑
大橋和也
流星!大ちゃん爆笑してるねんけど!
大西流星
知らん笑
大橋和也
さっき抱きついたの俺ちゃうからな!?セクハラしたの大ちゃんやから
大西流星
ふっ、ふふっ、ん〜っ、うま〜っ♡
西畑大吾
美味しそうに食べるね♡
俺のを♡
大橋和也
ちょっ、おーい!笑
大西流星
大橋くんも食べよ?美味しいで
西畑大吾
自分で作ったやつやけどな
大橋和也
ええよ別に。大ちゃんが作ったのは流星が食べるやろ。流星が喜んでるなら、それでええ
西畑大吾
·····うん
大橋和也
いただきます
大西流星
んっ、いはらいへまふっいただいてます
大橋和也
はははっ、口いっぱいやな笑
久しぶりの大ちゃんの味を、たっぷり堪能した。

初めて、ここに大ちゃんがいるって、実感した。だって、この味は、大ちゃんにしか出せへんもん。この味は、確かに大ちゃんのやから。

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