第12話

待宵に、さよならを。 12
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2024/12/09 05:00 更新
─流星side─

死因は分かった。大ちゃんの体があったのも確認した。でもそしたら、なんで大ちゃんはここにいるんやろ…

成仏できてへんのかな…
未練が残ってるとか?地縛霊……ではないしなぁ。事故のあった場所にいるわけじゃないし…

「大ちゃんは、なんでここにいるん?」

「ん?流星と一緒にいたいから」

「はぁーっ、大ちゃんのことやから僕と一緒にいたいからとか言ってそうやな。そうじゃなくてさ」

「ほんまにすごいな笑 うん?そうじゃなくて?」

「なんで、魂がここに残ってるん?」

「あぁ。まだ火葬されてないから?葬式もまだやし」

あかん。大橋くんいないと全くなんにも分からへん。俺独り言喋ってるだけ。

「あれか。お葬式やってないからか」

「やっぱ考えてること一緒やね♡」

そりゃ成仏するわけないわ…
大ちゃんも、最初は自分が生きてるって思ってたんやろ?なんで死んだかも分かってなかった。自分が霊やと自覚してないのに、成仏なんてするわけない。まぁ、僕には見えへんけど。

「はぁ。疲れた…」

「いっぱい泣いてたもんな」

今日1日で3ヶ月分くらいの水分出したと思う。

「なぁ流星、指輪付けてみてや。サイズぴったりやと思うねんけど」

「大ちゃんももう寝るやろ?寝室行くで」

「··········うん」

カチッとリビングの明かりを消して、寝室に入り、大ちゃんが入るスペースを開けてベッドに潜った。

「流星、、俺ずっと、伝えてなかったことがあって」

「あ、アラーム…」

明日も早起きかぁ…

「こうなる前に、ちゃんと伝えたかった。流星、愛してる」

ピッと電気を消して、毛布を深く被った。明日絶対顔浮腫むから、早めに…

「はーっ、ダメか。伝わらへんか…」

「大ちゃん?寝てる?」

「あ、まだ。今ベッド入った」

「·····抱き合って寝たい」

「ぇっ、、よ、喜んで?笑」

隣にいるか分からない、ただの空気をギュゥっと抱きしめた。いつも寝る時、大ちゃんは僕を抱き枕みたいに抱いて寝る。僕もそれに慣れて、大ちゃんに包んでもらわないと、寝つきが悪くなった。

「ふふっ、おやすみ流星」

「おやすみ大ちゃん」

温もりも感触も何もないけど、なんとなく、いる気がして、抱きしめられてる気がして、久しぶりに早く寝れた。



















「流星流星」

「んー?」

何かを企んでるような、愉しそうな声に振り返ると、大ちゃんはスマホを前に出してきた。

「写真撮ろ♡」

「写真?笑」

いやいきなりすぎるやろ。どこかに行ってるでもなく、普通に家で過ごしてるだけやで?こんなの撮っても面白くないやろ。

「はい、前見て」

「嫌や。髪整えてないし」

「大丈夫。流星は十分可愛いよ♡」

「可愛くない!笑」

「ほーら、前見て」

このままやと一生このやり取りすることになりそうやったから、前見て、ピースしてあげた。

「あ、流星」

「ん?…っ!?」

名前を呼ばれて振り返ると、唇を重ねられて、目を見開いた。驚きで動けないでいると、カメラのシャッター音が聞こえて、前を向いた。

「今何した?」

「ん?なんも?」

「写真撮ったやろ!」

「いや?そんなことしてへんよ」

「じゃあ見してみ。貸して」

「やだ」

「こら!笑 ちょっ!逃げるなっ!笑」

「ははっ、誰にも見せへんもん笑」

「消すから貸して!笑」

「何消すん?なんか消すもんあった?」

「さっきのキスのっ」

「そんなん知らんもん」

「このっ、ちょ!消して!笑」

「やだね笑」



















──ジリジリジリジリ·····

「んん……」

うるさっ。

寝起きで視界がぼやける中、手探りでスマホを手に取って、アラームを止めた。

「んんんっ…」

なんか、懐かしい夢見たな…

スマホを奪おうとしても、スッとかわされて、逃げられて、結局写真を見ることも、消すこともできなかった。

あの時の写真が、大ちゃんのスマホの待ち受けになってたんやな…

「っ、、はぁっ…っ」

「あ、流星起き、、、え、流星?どうした?!どっか痛い?なんで泣いてっ」

楽しかったなぁ…
毎日飽きなくて、楽しくて、幸せで…

「んんっ、、ゔっ」

楽しかった日々だけが蘇って、また、あの頃みたいに大ちゃんと過ごしたいって、できもしないことを願って苦しくなって、朝から泣いてしまった。

「っ、流星…」

「はっ、、はぁーっ、、準備しなきゃっ」

「あっ……っ」

鏡見た時、やばいなぁって他人事のように思いながら顔を洗った。接客業なのに、こんな目を腫らした顔で出られへん…

沈んだ気持ちでお店に行くと、全員に心配されて、すぐ帰らされそうやった。働きたい意志を示すと、大橋くんは「じゃあ今日は厨房お願い」って、言ってくれた。

何もしてないより、働いてた方がずっと楽。他の事は考えられないくらい忙しくなるこのお店は、今の僕には快適すぎた。

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