第35話

ハッピーエンド-第4章-
368
2021/03/01 11:00
♡あなたside(now)♡
彼の放った言葉の意味はなんだったのだろう…
遮ってしまった私に考える権利なんてないのに、淡い期待を抱いてしまう。
上司
上司
川村さんと知り合いだったんだね!
その声に横を歩く彼女の方を向くと、「どんな関係なのか」眼で訴えてくる。
(なまえ)
あなた
…えっと高校の同級生なんです
そんな嘘ともホントともいえない曖昧な言葉で返すも、彼女は"あなたも関西出身だもんね!"とそれ以上聴いてくることはなかった。
(なまえ)
あなた
仕事だから、ちゃんとやらないとね…
そして次に呟いたその声は、今度は彼女にさえも届くことなく青空の下へ消えていった…
✩.*˚.*・゚ .゚・*.✩.*˚.*・゚ .゚・*.✩.*˚.*・゚ .゚・*.✩.*˚.*・゚
♡あなたside(past)♡
彼が夢を叶えるために上京した約1年後。
私も東京の大学に進学するために上京した。
引越し作業も終わった頃、チャイムの音に玄関を開けると武者修行終わりの彼がいて…
川村壱馬
川村壱馬
あなた、久々やな…
(なまえ)
あなた
…っ//壱馬、会いたかった//
まだ玄関なのに、思いっきり抱きつく。
久しぶりだったからか、するりと言えた本音。
あの日以来、段々言えなくなっていったんだっけ…
川村壱馬
川村壱馬
俺もやで…
そう耳元で囁いて優しく抱きしめながら、
甘いキスを落とす彼。
ソファーで隣同士に座る。
さっきから大分時間が経っていた…
その時鳴る彼の携帯。
川村壱馬
川村壱馬
ちょっと、ごめん…
そう断りを入れて玄関の方へ歩いて行く。彼の「お疲れ様です」という声だけが微かに聴こえてきた。
(なまえ)
あなた
やっぱり
"何も変わらん"わけないよね…
そう前に公園で言ってくれた彼の言葉を思い出して呟く。誰にも聴かれないと思ってたそれは、
川村壱馬
川村壱馬
どーしたん?
彼に聴かれていたらしい…
(なまえ)
あなた
なんもないよ!
忙しいのにごめんね、
迷惑かけたくなくて…重い女と思われたくなくて…努めて明るくそう返しても、
川村壱馬
川村壱馬
その顔で何もあらへんわけないやん!
隣に座りなおした彼の両手に頬を包まれ、彼の方に向かせられる。
(なまえ)
あなた
…っ//…う、
さらに彼に見つめられて、溢れる感情を逃せなくなった私の目から涙が零れる。
すると彼はゆっくり私の頭を肩に寄せ、背中をポンポンさそってくれて、
川村壱馬
川村壱馬
ゆっくりでいい。…やから話して
そう低く落ち着く声で言うと、次の言葉をずっと待っていてくれる。
そんな彼を前に全部話した。
忙しいのに、迷惑をかけてること…

壱馬はずっと努力しているのに、私は何も変われていないこと…

少し話すごとに"うん"と相槌をうってくれていた彼は、全て話し終えた私の顔をあげるように促し…
川村壱馬
川村壱馬
あなたはあなたのままでいいんよ…
優しい目を向けながら、
川村壱馬
川村壱馬
そのまま俺の横におって…
そう言って涙を拭いてくれた。
✩.*˚.*・゚ .゚・*.✩.*˚.*・゚ .゚・*.✩.*˚.*・゚ .゚・*.✩.*˚.*・゚
♡あなたside(now)♡
(なまえ)
あなた
忘れるなんて、無理だよ…
どんなに考えないようにしても、
彼のことを考えてしまう…
それぐらい、
見える景色、全部…
聴こえてくる音、全て…
(なまえ)
あなた
貴方に色付けられてしまったんだな…
その声はあの時と同じで…でも彼の匂いはもうしない部屋で、寂しく響いた。

プリ小説オーディオドラマ