第9話

ゆめ
44
2021/06/10 09:46
星の光…ぼくは夜に光り輝くときいた、
星を見たことがない。


あの赤と黄色が混ざるとき、
あの空の色の時間になると
ぼくは黒い布に覆われ、みんなと同じ小屋に戻される。

初めはみんな、
黒い布で覆われているのだと思っていた。

でも、やぎたちの話からするに
ぼくだけのようだった。


何故ぼくだけが黒い布で覆われるのか…


この間の出来事と繋がるような気がした。


どうしてぼくは星を見てはいけないのだろう…。
どうしてぼくは星の光に当たってはいけないのだろう。



畑沼さんが松ぼっくりハウスに来た次の日、
ろきは畑沼さんのところに行った。

ろきはお顔もお洋服も、
全部ボロボロになって帰ってきたんだ。


なにがあったかは教えてくれなかったけど、

【安心してね!】と、だけ言って

松ぼっくり茶を入れてくれた。


なんだかいつもより味が感じられなかった。
松ぼっくり茶が悪いんじゃない。
ぼくは心配で心配で、でもろきを困らせたくなかった。


「美味しいよ!」と、いって
ゆっくりと1口ずつ味わうようにのんだ。


ほぐとは、椅子に戻ってから何日もお話が出来ていなかった。


どうやったら人間になってくれるんだろう。

と、いつも考えてしまうからか、
毎晩のようにほぐがぼくの夢の中にでてきていた。



ほぐがぼくを優しく見つめて、
ぼくがほぐを見つめ返すと

心臓が潰れて、そのまま息が出来なくなりそうなほど苦しく、喉の奥が乾いてしまうような不思議な感覚に陥った。

苦しいのに何故だかもう一度感じたい感覚に、
ほぐの美しさに、ぼくは幸せで包まれた。


しかし夢が終わるととても悲しみが襲ってきて
無意識のうちに涙が溢れていた。


そんな時も、ろきは毎朝コトコトと
松ぼっくり茶を入れてくれた。

ほぐに座るぼくは安心感と寂しさが入り交じって
喉の奥が痛むのを感じ、
それを受け入れていいのだろうかと、
ろきに話したら心配するんじゃないか…と、
自分の中に押し殺した。


夢は冷酷だと思った。
夢を見た自分だけが現実でも影響されるのだから。




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