「何してんのーねえちゃん、そこで」
ふと顔を上げる。複数の小学生がボールを持ってこちらを見ていた。
不審がられている。そりゃそうだ。公園に女子高校生が死んだ喋を持って立ち尽くすことなど基本的には無い。
「そこ後で使いたいから終わったら教えて」
ぶっきらぼうにそう言い、彼らは私から少し離れたところでお菓子を食べ始めた。
「ごめん、あと5分で終わらせる」
私はそう言い、少し端にうわっている木の根元に移動した。
ペスカ。私の光。
そして、ひとつのいのち。
どこにでもある、どこにも替えの利かない、いのち。
「ぺスカ。私……出逢えて良かったって、思うよ。」
例えそれが独りよがりな出逢いだとしても。
「それでも……自分勝手な幸せを、ありがとう。」
ぺスカが居たから、少しだけ生活に色が付いた。
空になった鳥籠、土のついたサンダル、相変わらずのボサボサの髪。
「白露。お前にぴったりだと思ったんだ、どうかな、気に入ってくれたかな、」
今更過ぎる。何もかも、もう遅いのはわかっている。
それでも、何回でも私はぺスカに想いを馳せるよ。
少し離れたところから、先ほどの小学生たちがいぶかしげにこちらを見ている。
軽い舌打ちが聞こえた。なぜか苛立ちはしなかった。
自分が思っているよりも、他人は私のことを気にしていない。
今までは、私が悪いんだと思っていた。
私がここにいることが誰かにとっての悪なのだ、と。
でも違うんだ。
きっと、この少年たちは、私以外の人間に対しても同じように舌打ちするだろう。
人間は、私が思うよりも、単純で自分勝手だ。
そして、それが、人間のやさしさだ。
「ごめん、待たせたね。友達の墓なんだ。」
軽く微笑む。これでいいんだ。
なあ、ぺスカ。これでいいんだろ。
振り返るのはやめよう。振り返ったとしても、私は前を向いて歩こう。
ぺスカは私に外の世界を教えてくれた光だった。
ーーー大丈夫だよ。
少しだけ、世界は、私が思うよりも優しいとわかったから。
◇◇◇
相変わらず学校は嫌いだ。
どうせ陰口を言われ、根も葉もない噂を聞く羽目になるのはわかりきっていた。
学校には行かない。それは変わらない。
ただ、今まではゲームに明け暮れていた時間を、少しだけ教科書を読む時間に充てようと思った。
毎日できるわけじゃない、勉強は嫌いだし、正直見たくもない。
読んでいるようで読んでいない日本史。数式の一割しか理解できない数学。
現代語訳だけをなんとなく眺める古文。
それでも、それでいい。
一歩進んでは後退して、そういう小さなものを積み重ねた先に、今までとは違う景色が見えるのだと、今はそう思う。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。