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第2話

プロローグ
329
2023/03/31 08:41

楽しかったはずだった。

幸せだったはずだった。

自分の人生の先が見えなくて、光の届かない絶望の底にいた時

なーくんが見つけてくれて、すとぷりという場所で“さとみ”として生きていく道を示してくれた。

すとぷりは明るくて、暖かくて、自由で……



それで良かった。それが良かった。

だから、アンチなんて全然気にならなかった。


“さとみ”は最年長で、かっこよくて、でもちょっとかわいくてお茶目で。

マイペースな自由人だけど、仲間のことが大切で、みんなの頼れるお兄さん。
すとぷりは自分の生きる場所だから。大好きな居場所だから。

自分のせいで汚れるなんて絶対に嫌で、だからこそ完璧な“さとみ”を創り上げる。
りすなーからの『好き』もアンチからの『嫌い』も、全部全部受け止めて。

理想の“さとみ”を創って、演じる。

りすなーからの言葉は励みになる。

俺の全部を受け止めて、肯定してくれる。俺を見てくれる。認めてくれる。


アンチからの言葉は参考になる。

俺のダメなことを教えてくれる。胸はチクチクするけど。



大好きなすとぷりを守るために、そのために“さとみ”を創るその手がかりになるなら、

りすなーの言葉もアンチの言葉も皆等しく俺の糧。


そうして本当の自分を押し殺して、理想の“さとみ”の仮面をかぶる。
それは他でもない、すとぷりのため。引いては、大好きな居場所を守りたい自分のため。








_____だから、俺が苦しいのだって全然平気なんだ




……

……あれ?
「苦しい」?

すとぷりは明るくて、暖かくて、自由で……

俺はそんなすとぷりが大好きで、だからこそ守りたくて、だから、だから…






発光する画面


いっぱいに、『最年長』の文字






…そうだ。俺は何も考えなくていい。




『最年長』 それが今の“さとみ”のあるべき姿なんだ

りすなーも、アンチも、そう思ってる


だから。すとぷりのために、俺のために、


『最年長』の“さとみ”を創り上げなくちゃ________




りすなー
さとみくん、昔よりもかっこよくなった!
アンチ
さとみってぶっちゃけ役立たずじゃね?
歌もゲームも対して上手くないし
りすなー
面倒見いいよね、さすが最年長!
アンチ
最年長のくせに、足手まといじゃん




楽しかったはずだった。

幸せだったはずだった。


俺はそっと耳を塞ぐ。
もう…聞きたくない……






俺が、俺らしく生きるためのすとぷり

だけど、すとぷりに俺はいない。俺の欠片なんてない。

俺の居場所は全部、


『最年長』の“さとみ”のものだから。



苦しい 苦しい 苦しい

“さとみ”を演じるのも、すとぷりのために頑張るのも


もう つかれた





…っ、もう、


「 『最年長』 なんて聞きたくない…… 」

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