楽しかったはずだった。
幸せだったはずだった。
自分の人生の先が見えなくて、光の届かない絶望の底にいた時
なーくんが見つけてくれて、すとぷりという場所で“さとみ”として生きていく道を示してくれた。
すとぷりは明るくて、暖かくて、自由で……
それで良かった。それが良かった。
だから、アンチなんて全然気にならなかった。
“さとみ”は最年長で、かっこよくて、でもちょっとかわいくてお茶目で。
マイペースな自由人だけど、仲間のことが大切で、みんなの頼れるお兄さん。
すとぷりは自分の生きる場所だから。大好きな居場所だから。
自分のせいで汚れるなんて絶対に嫌で、だからこそ完璧な“さとみ”を創り上げる。
りすなーからの『好き』もアンチからの『嫌い』も、全部全部受け止めて。
理想の“さとみ”を創って、演じる。
りすなーからの言葉は励みになる。
俺の全部を受け止めて、肯定してくれる。俺を見てくれる。認めてくれる。
アンチからの言葉は参考になる。
俺のダメなことを教えてくれる。胸はチクチクするけど。
大好きなすとぷりを守るために、そのために“さとみ”を創るその手がかりになるなら、
りすなーの言葉もアンチの言葉も皆等しく俺の糧。
そうして本当の自分を押し殺して、理想の“さとみ”の仮面をかぶる。
それは他でもない、すとぷりのため。引いては、大好きな居場所を守りたい自分のため。
_____だから、俺が苦しいのだって全然平気なんだ
……
……あれ?
「苦しい」?
すとぷりは明るくて、暖かくて、自由で……
俺はそんなすとぷりが大好きで、だからこそ守りたくて、だから、だから…
発光する画面
いっぱいに、『最年長』の文字
…そうだ。俺は何も考えなくていい。
『最年長』 それが今の“さとみ”のあるべき姿なんだ
りすなーも、アンチも、そう思ってる
だから。すとぷりのために、俺のために、
『最年長』の“さとみ”を創り上げなくちゃ________
楽しかったはずだった。
幸せだったはずだった。
俺はそっと耳を塞ぐ。
俺が、俺らしく生きるための道。
だけど、すとぷりに俺はいない。俺の欠片なんてない。
俺の居場所は全部、
『最年長』の“さとみ”のものだから。
苦しい 苦しい 苦しい
“さとみ”を演じるのも、すとぷりのために頑張るのも
もう つかれた
「 『最年長』 なんて聞きたくない…… 」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!