アムリリスと別れてすぐ
近寄ってくる人達を押し切って
デルキラ様は端の方へ私を連れていった
そして唐突に聞かれる
「人間界に帰りたいか?」と
まぁ正直に言うと
である
そりゃそんな急に
「戻りたい?」なんて聞かれても
即答できるほど反射神経良くないし
てか意味がわからない
なぜ今?
このタイミングで言う必要ある?
もうちょい危機感持って欲しい……
帰りたいと言えば帰りたい
でもなんていうか
「もう家が恋してくてたまらないっ!!」
って訳じゃなくて
動物の本能的な?
家じゃないと落ち着けない的な?
そんな感じ
現時点で魔界の生活には満足してる
仕事しなくていいし
自分の好きなことしていいし
そりゃ学校の設立のことはあるけど
今この状況でこの世界に対して不満はない
だが、
あ、ハーゲンダッツじゃないよ?
もっとほかの事だから
興味なさげだな、おい
んじゃ聞いた意味はなんだよ!!
猫は気まぐれに外に行っては“帰ってくる”
理由がご飯だろうが、寝床だろうが
猫は野放しにしてもいずれは帰ってくる
そう、“帰ってくる”のだ
でも、
み、み、……
みんな指示にちゃんと従ってくれる……!
ありがてぇーーー!!
いやー、人間界でこの光景は有り得なかったからねぇ
貴族会からざっと半年ほど
一気に時間が進んだ気がする
アムリリス、通称アムちゃんのいざこざから
アムちゃんとはなんとなく連絡を取りあっている
大体がデルキラ様との進展は無いのか、
とかの質問系だが……
みんながテキパキと動いてる中で、
私はみんなに指示を出す
なんだか自分だけ動いてないので
多少の罪悪感はあるが……
まぁ、大体の設計とアイデアの元手は私なので
そこは、まぁ、なんて言うか?
ご愛嬌的な?
教えてもらった魔術は変化から守護などといった
比較的簡単な基礎魔術
デルキラ様やポロちゃんいわく、
「自分の身を守るのが第1優先」
らしい
まぁ、つまり
“自分たちは守らないから自分の身は自分で守れよ”
との事である(自分解釈)
まぁ、さすがにずっと
魔王であるデルキラ様にくっつくのは迷惑だ
最低限自分の身を守れるようにと練習は続けている
まぁ、その学び舎を作るのはが私の欲なんですけどね
後に彼女ははビルスの他二校
合わせて三校の悪魔の学び舎を設立する
魔海学園 “レビアロン”
地帝学院 “ジャカポ”
そして、
悪魔学校 “バビルス”
3つの学び舎を設立
それぞれ
“規律”
“悪徳”
“魔術”
を第一とした悪魔の学び舎
のち、3人の大悪魔を学長として務めさせ、
“全悪魔が魔術を使える世界”
それをめざして
海に
地下に
そして魔王の元に
三校の悪魔の学び舎を設立した彼女の名は
こう受け継がれる
彼女は悪魔の“元祖”だと
人が悪魔の元祖など
なんとも皮肉と言えたものか
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!