第37話

幹部の過去
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2025/02/03 08:55 更新
マスター
先に1つ申し上げますが、この5人は本当の兄弟ではありませんよ。
小野寺彩
そうなんですか!?
 驚いた。てっきり本当の兄弟かと・・・。
マスター
私は喫茶店で働くまで、児童養護施設で働いていました。
マスター
その時、まだ小さかった幹部達が暮らしていたのです。
マスター
5人とも、血は繋がっていませんでしたが兄弟のように仲良しでした。
 そんなことがあったんだ・・・。
マスター
そのうち、健人はお金持ちの夫妻に引き取られました。
浦川健人
まさかマスターさんが職員だったなんて・・・。
そんなガキの頃の話、覚えてないって。
マスター
ちなみにですが、
 マスターさんは、くるっと向きを変え、大沢くんの方を見る。
マスター
和馬も、同じ児童養護施設にいたんですよ。
大沢和馬
え?覚えてなかった・・・。
マスター
健人と同時期ぐらいに、今のご両親に引き取られましたが。
小野寺彩
(そうだったんだ・・・。)
マスター
私は和馬を含めて、6人を我が子のように思っていました。
マスター
けれど、その後は体調を崩してしまい、仕事を辞めました。
マスター
仕事を辞めてからも、まだ施設に残っていた4人が心配でした。
 マスターさんの目が涙目になっていく。
マスター
みんな、覚えていますか?「いつか一緒に美味しいコーヒーを飲みたいね」と、話したのを。
マスター
私はその言葉を忘れてはいませんでした。だから、喫茶店を始めたんです。
 マスターさんの目から大粒の涙がこぼれ落ちている。
マスター
そしたら、成長した健人が店を訪れて・・・、その後は和馬も訪れて・・・。
マスター
ただの偶然かもしれないけど、私は本当に嬉しかったんです。
マスター
話しかけようと思ったけど、できませんでした。2人の目つきはあの頃とは変わって、冷たかったからです。
 私も感じた。大沢くんや浦川くんではないけれど、黒の冷たい目つき。
マスター
近所の人の噂を聞き、和馬を除いた5人は組織の幹部だと知りました。
マスター
私は悲しくなりました。あんなに純粋だった子供がヤクザとか喧嘩とか・・・。
 涙はボタボタと流れ、アスファルトを濡らす。
マスター
だから今、私は助けにきたんです。
小野寺彩
そういう事だったんですね・・・。
 なんだか切ない。
 でも、人のためにここまでできるマスターさんは本当にすごかった。
そんなこと、俺には関係ない。
お前は部外者だ。
マスター
太一。もう、やめなさい。
小野寺彩
太一?
マスター
黒の本名は黒谷太一。秋は関口彰。東は東山友哉。西は西岡洋太です。
本名言うなよー。
マスター
太一達はなぜ、組織を作ったんですか?
・・・・・。
小野寺彩
言えない理由があるの?
 黒は黙っていた。頑なに言わない。みたいな顔をしている。
 でも、沈黙が疲れたのか、黒は口を開いた。
・・・・・居場所が欲しかった。
大沢和馬
は?
倉本祐一
え?
マスター
ですよね。
ここに集まる奴らはそんな人ばっかりだ。
居場所は作れても、誰かに壊されるのが怖かった。だから、武器を貰おうと・・・。
小野寺彩
(なんだか子供みたい・・・。)
 黒はそのまま泣き崩れた。見た目に反して泣き虫なんだと思った。
 黒は強がっていただけなんだ。本当は気が弱いだけだったんだ。
大沢和馬
俺、今の親に育児放棄されてんだ。
 大沢くんはとんでもないことをポロッと口に出す。
倉本祐一
俺も鈴香も、引き取られた親戚に虐待受けてたし。
 私は、苦しかった。
 憎い。何もできなかった自分が。ただ突っ立ってただけの自分が。
 みんなはこんなに辛い思いをしてるのに、私は何をしていたんだろう?
 でも1番憎いのは昔の私。面倒ごとは避けて、とにかくほとんどのことを面倒くさいと思っていた。
 平穏に過ごしたいからとか、そんな綺麗な言葉で言い訳をして。



 ───パトカーのサイレンが聞こえる。
警察だ。
 どうやら、近所の人が通報したらしい。
 その後、事情聴取のために幹部とマスターさんは警察に連れて行かれた。
 私達、3人はポツンと立っていた。
倉本祐一
俺、鈴香待ってるし帰るわ。
 そう言って、倉本祐一は去って行った。



大沢和馬
そんなに思い悩むな。
小野寺彩
え?
大沢和馬
彩は変わったさ。必死に俺のこと守ってくれたよな。
大沢和馬
・・・嬉しかった。

 ・・・そうだよ。大沢くんの言うとおり。
 大沢くんが認めてくれたんだもの。思い悩むのはやめよう。
 プーッ プーッ プーッ
小野寺彩
電話?
 ガチャ
小野寺彩
もしもし?
小野寺紬
早く帰ってきなさい!
小野寺彩
・・・。
小野寺紬
・・・彩?
小野寺彩
・・・お母さん、お願いがあるの。
小野寺紬
何よ?
小野寺彩
大沢くんの手当をしてあげて。

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