第8話

[偶像の招待]紫 × 桃
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2026/01/22 13:34 更新

女体化死ネタ







She has the authority for the highest interpretation.





 あんたとならあたし、何処へだっていけるよ。


 そう口にしようとして、何度途中で辞めたことだろう。




 『魔法少女』、それはこの世界ではわりと一般的な職業だ。
 人の感情を貪り食う『悪魔』から街を守る、可愛くて強い無敵のヒーロー。それがあたしの双子の姉だった。

# 桃
あれ? いるま、先行っててって言ったのに
# 紫
……わざわざそんなちっこい奴まで変身して倒すん?
# 桃
仕方ないじゃん、変身しないと魔法使えないし
# 桃
それに、こういうやつの方が気付かれにくいからいっぱいエネルギー蓄えていつか爆発すんの!
# 桃
若い芽は積んどかないとね〜
# 紫
ブラック企業の上司みたいなこと言ってる
# 桃
あたしは最強の『魔法少女ピンク』なんだからちょっと発言に問題があっても許されるの!
# 紫
お前まじやばいわ、魔法少女向いてないよ

 魔法少女として絶大な人気と実力を誇り、意識は高くまるでアイドルのような完璧具合。
 誰から見ても分かった、彼女は鬼才だと。魔法少女になるべくして生まれた、誰よりも慈愛に満ちた少女であると。
 しかもそれは世間のために作られた偶像ではなく、彼女自身の天性のものだ。

 そんな姿をあたしは嫉妬もしなかったし憎みもしなかった。双子とはいえ違うのは当たり前だし、あいつはあいつで、あたしはあたしで、お互いに違う人生を肯定できていれば、それでいいと思っていた。
 まぁ実際、できていなかったわけだが。




 全部終わった後で思った。あいつを無意識のうちに神格化して人間を辞めさせていたのは、世間の目ではなくてあたしじゃないかと。



# 桃
膵臓癌だってさぁ
# 紫
…………は

 ある冬の日だった。
 雪がちらちらと降っている窓の外を見つめながら、らんはさぞかし残念そうに言葉を漏らした。

# 紫
……悪魔になんか、やられたとかじゃなくて
# 桃
あいつらは感情を食べるんだよ?
殺されるって言ってもそれは心だけで、身体には何の影響もない
# 桃
廃人にはなるけど
# 紫
そういうことじゃなくてっ!
# 桃
いるま


# 桃
ごめんね
# 桃
いるまが好きって言ってくれた魔法少女のあたし、いなくなっちゃう
# 紫
……
# 紫
あたしは、魔法少女の
# 紫
……
# 桃
……ほんとかなあ




 『あたしは魔法少女のあんたが好きなわけじゃない』




 そう言いかけて止まった



 可愛くて、頭が良くて、運動もできて、歌が上手で、友達もたくさんいて
 何もかも持ってたあんたが、もし魔法少女のカテゴリに収まらずにあたしの隣にいたら

 あたしはあんたを、好きになってただろうか


# 桃
いるま
# 桃
好きだよ
# 紫
……
# 桃
だからいるまはさ
# 桃
あたしのこと嫌いでいてね
# 紫
……ら、






# 紫
……










 そう言い残して彼女はあっという間に死んだ。

















 魔法少女ピンク。

 強くて優しい、正義のヒーロー。




 それは




 ミンチになった動物が、当たり前のように人間に笑顔で食べられるように

 魂のいないVtuberが、亡骸となってネットの海を彷徨うように



 『概念』となり、らんがいなくなってから、巡り巡ってあたしのところに還ってきた。



# 紫
『魔法少女ピンク』を引き継ぐ?
# 紫
あたしが?
# 赤
あぁ

 あたしの目の前にそいつ……魔法少女レッドが現れたのは、らんが死んでから⬛︎ヶ月後のことだった。
 肩まで伸ばされた少しパサついた髪、吊り上がった目、色濃いクマ。大事にされていない身体と整った顔立ちがアンバランスで超怪しくて、警察に駆け込もうか悩んだのを覚えてる。

# 紫
……何言ってんのか、よくわかんないんだけど
# 赤
そのままの意味だよ
# 赤
志堂蘭は死んだ、これは紛れもなく事実
# 赤
ただ悪魔の活性化が相次ぐ今、『魔法少女ピンク』の概念を今消し去るわけにはいかないんだわ
# 赤
不安の渦からさらに暴走率高くなるからな
# 紫
……つまり、誰かがらんの代わりをしないといけないと
# 赤
そう。そして、元ピンクの実の妹である志堂入間。
あんたが一番素質があると、魔法少女管理協会で判断された
# 赤
だから、お前がらんの代わりに魔法少女ピンクになれ
# 紫
……

 なってほしいじゃない。なれだった。
 理由を尋ねても、らんを蔑ろにされたようで逆上しても、きっとこっちに拒否権なんてないのだろうと思った。

 ただ、ひとつだけ。


# 紫
一応聞くけどさ

 ひとつだけ、欲しい答えがあった。




# 紫
魔法少女それは、らんの望んだ幸せ?






# 赤
……しらねぇよ




# 赤
けどまあ、魔法少女の思い描く未来は、幸せであるべきだろ
# 紫
………………


# 紫
そう、わかった





 それはあたしの求めていた答えではなかったし、らんの本心を語っていたわけでもなかった。ただの、彼女の一般論だと思った。

 だから同時に嬉しかった。らんはきっと、そんなこと思ってない。

# 紫
(お前ならきっと、甘いものが食べたいって言うし)


 ケーキを食べて、クッキーを食べて、最後に少し冷めた紅茶を一口飲んで。「お貴族様みたい」って、そう言ってにこにこ呑気に笑う。

 あたしがサイコーに面白い話をして、あんたがサイテーにつまんない話をする。らんの話を聞いて場は冷めてあんたが怒って、あたしの返しでちょっと嬉しそうに大爆笑。
 そんで最後にあんたは必ず言うの、「お茶会はやっぱり楽しいな」って。



 うん、我ながら、完璧なお前。




 今となってはどうしょうもない偶像だけど、あたしにとっては魔法みたいな時間だった。



 ねえ、あんたは魔法少女だったけどさ、別にそうじゃなくても、最期まで普通でいても悪くなかったんじゃないかって思うの。





だってあたし、あんたとなら、何処へだっていけたから。




# 紫
ま、今はもうあたしがあんただから
# 紫
あんまり関係ないね





# 紫
あー、甘いものが食べたい!
# 紫
誰か、お茶会にでも招待しようかなあ!


 あたしは魔法少女。


 いるまあたしが好きで、あんたらんがすきで、お前が嫌いな魔法少女。


 ね、きっとそうでしょう?

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