女体化死ネタ
She has the authority for the highest interpretation.
あんたとならあたし、何処へだっていけるよ。
そう口にしようとして、何度途中で辞めたことだろう。
『魔法少女』、それはこの世界ではわりと一般的な職業だ。
人の感情を貪り食う『悪魔』から街を守る、可愛くて強い無敵のヒーロー。それがあたしの双子の姉だった。
魔法少女として絶大な人気と実力を誇り、意識は高くまるでアイドルのような完璧具合。
誰から見ても分かった、彼女は鬼才だと。魔法少女になるべくして生まれた、誰よりも慈愛に満ちた少女であると。
しかもそれは世間のために作られた偶像ではなく、彼女自身の天性のものだ。
そんな姿をあたしは嫉妬もしなかったし憎みもしなかった。双子とはいえ違うのは当たり前だし、あいつはあいつで、あたしはあたしで、お互いに違う人生を肯定できていれば、それでいいと思っていた。
まぁ実際、できていなかったわけだが。
全部終わった後で思った。あいつを無意識のうちに神格化して人間を辞めさせていたのは、世間の目ではなくてあたしじゃないかと。
ある冬の日だった。
雪がちらちらと降っている窓の外を見つめながら、らんはさぞかし残念そうに言葉を漏らした。
『あたしは魔法少女のあんたが好きなわけじゃない』
そう言いかけて止まった
可愛くて、頭が良くて、運動もできて、歌が上手で、友達もたくさんいて
何もかも持ってたあんたが、もし魔法少女のカテゴリに収まらずにあたしの隣にいたら
あたしはあんたを、好きになってただろうか
そう言い残して彼女はあっという間に死んだ。
魔法少女ピンク。
強くて優しい、正義のヒーロー。
それは
ミンチになった動物が、当たり前のように人間に笑顔で食べられるように
魂のいないVtuberが、亡骸となってネットの海を彷徨うように
『概念』となり、らんがいなくなってから、巡り巡ってあたしのところに還ってきた。
あたしの目の前にそいつ……魔法少女レッドが現れたのは、らんが死んでから⬛︎ヶ月後のことだった。
肩まで伸ばされた少しパサついた髪、吊り上がった目、色濃いクマ。大事にされていない身体と整った顔立ちがアンバランスで超怪しくて、警察に駆け込もうか悩んだのを覚えてる。
なってほしいじゃない。なれだった。
理由を尋ねても、らんを蔑ろにされたようで逆上しても、きっとこっちに拒否権なんてないのだろうと思った。
ただ、ひとつだけ。
ひとつだけ、欲しい答えがあった。
それはあたしの求めていた答えではなかったし、らんの本心を語っていたわけでもなかった。ただの、彼女の一般論だと思った。
だから同時に嬉しかった。らんはきっと、そんなこと思ってない。
ケーキを食べて、クッキーを食べて、最後に少し冷めた紅茶を一口飲んで。「お貴族様みたい」って、そう言ってにこにこ呑気に笑う。
あたしがサイコーに面白い話をして、あんたがサイテーにつまんない話をする。らんの話を聞いて場は冷めてあんたが怒って、あたしの返しでちょっと嬉しそうに大爆笑。
そんで最後にあんたは必ず言うの、「お茶会はやっぱり楽しいな」って。
うん、我ながら、完璧なお前。
今となってはどうしょうもない偶像だけど、あたしにとっては魔法みたいな時間だった。
ねえ、あんたは魔法少女だったけどさ、別にそうじゃなくても、最期まで普通でいても悪くなかったんじゃないかって思うの。
だってあたし、あんたとなら、何処へだっていけたから。
あたしは魔法少女。
いるまが好きで、あんたがすきで、お前が嫌いな魔法少女。
ね、きっとそうでしょう?












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。