第16話

思い出した
2,007
2021/04/08 12:46


学校から出た課題や、ただただ家でぼーっとする日々を送り



夏休みが終わるまではあっという間だった。





























担任「みんな久しぶりだな!課題ちゃんとしてきたかぁ〜?」
























それを聞いて、慌て始める男子。















そんな様子を面白そうに笑っている他のクラスメイト。
















夏休み前までは当たり前に見ていたこの景色も、なんだか少し懐かしく感じる。























「あのさぁ〜」













HRあと、目の前の席の男の子がそう言いながら振り返る。







でも私は返事をしなかった。








だって、私なんかに話しかけるわけ、ないもん。












「ん〜?何」








「数学のさ……」



















ほら……




彼は斜め後ろの席のクラスメイトと楽しそうに話し始めた。























休憩時間は、少し気まずい。







ほかの人たちは仲のいい友達と楽しそうに話している中、私だけひとりぼっちで

体を丸めて席に座ってるのだから。























岬 あなた
はぁ



小さくため息ついた、その時。





岩泉 一
久しぶりだな、岬
岬 あなた
ぇっ



そう言うと、彼はにかっと笑った。





























───────── 誰かに、





話しかけられることが、こんなにも嬉しいなんて。












話したいことがいっぱいあって、

でもまずは、久しぶりって言った方がいいのかな……?












頭がごちゃごちゃになって、上手く言葉にできない。



















岩泉 一
夏祭り以来だな
岬 あなた
そう、だね



そこから話が続かなくて、どちらとも黙ったまま。

















クラスメイト「いーわーいーずーみぃー。ちょっとコレ見てみろよ」



















クラスの真ん中の方で集まっていた男子の1人が、岩泉に手招きする。


岩泉 一
おう


そう言うと、岩泉は呼ばれた方に向かって行ってしまった。
























……もう!











何やってるの!私は!










せっかく話しかけてくれたのに。










嬉しくて、話したいことがいーっぱいあったのに



結局何も話せなくて……

















岬 あなた
岩泉くん






小さく彼の名前を呼ぶ。
















夏休みのことがあってから、私自身も少しは変わったと思ったんだけどな。











学校での私は、暗くて地味な女子。


それは何一つ変わってない。












岩泉 一
あ、






きずくと岩泉が、何かを思い出したように勢いよく振り向いていた。







ばちっと目があったかと思うと、




岩泉 一
岬 あなた
は、はぃ



急に名前を呼ばれて、肩がとびあがる。



岩泉 一
……





彼は何も言わず、黙ったまま見つめてくる。














な、なに?何を言われるの!?











すると、岩泉がふと笑ったように見えた。







岩泉 一
今日部活ねぇから
岩泉 一
一緒に帰らね?


突然のお誘いに、しばらくフリーズ……




岬 あなた
……えっ?
岬 あなた
あ、うん
岬 あなた
か、帰ります……
岩泉 一
おう!じゃあ放課後な



その笑顔に思わずドキッとする。




沈みこんでいた気持ちが、いっきに上がってきた感じ。
































───────── ああ、そうだった。












夏祭りの時思ったんだ。
















私は地味で、友達も少ないけど、



自分の事を好きだって言ってくれる人がいるなら、それだけで幸せだっ〜て。

























前みたいに小さくなっていた背筋を、少し伸ばしてみる。




顔の前を塞いでいる前髪の隙間から、前をしっかりと見る。











岬 あなた
( よしっ )


……大丈夫。




そう、自分に言い聞かせる。























怖い。

他人と目を合わせるのが















でも、ひとりぼっちだった私に話しかけてくれる人がいた。
















さっきまで、ずーんと沈んでいた気持ちが

嘘みたいに、今は明るい。




















岩泉の方ちらっと見る。



私は小さな声で、" ありがとう " と、そう伝えておいた。

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