第10話

在る過去について
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2026/07/22 11:38 更新
其処は……5年前。桃陽邸…………

桃陽雛菊は、桃太郎機関の狂犬と有名だった。
当初から、頭一つ抜き出た実力で、若くも隊長に上り詰めた才能。

10歳の時、生家たる太宰家が、当時1歳の弟・治と両親とともに燃え、その後すぐに桃陽家に引き取られた。

治と雛菊の母親は、桃陽家当主の妹だったのだ。

養子として、男児のない当主の息子に迎えられた雛菊は、厳しく訓練されつつも、家族仲はよく育った。

養父……そして、養父の実子である、桃陽家の娘…
桃太郎機関で、『神官』と呼ばれる、桃太郎の名家からしか生まれない、能力増強の能力者。
その娘の名は、奇しくも『雛菊』出会った。
実質は従兄弟である上、年も同じ。
2人はすぐに仲良くなった。
『はい!』
姉の雛菊が、裏手の花畑で、花冠をかけてきた。
嬉しかった。
楽しかった。
暫くして、14歳になった雛菊は、機関養成学校に入学した。 
そして………其れから何年か経ち、姉には3歳の子供と、同じ『神官』の夫が出来ていた。

ある時、実家(桃陽家)に帰った雛菊を待っていたのは………毒殺された姉の死体だった。
父……養父であり、叔父であり、桃陽家当主。
桃陽春月。
その男が…………姉を、春月にとっての実の娘たる姉を殺した。

そして……其れを突き止めた雛菊が問い詰めると……
雛菊と同じ、『好きな位置に好きな形の刃物を生み出す能力』
で、自身の頸動脈を掻き切り…………死んだ。
雛菊は……父の、養父の名誉を守りたかった。
『神官を殺した大罪人』ではなく、『桃陽家の当主』として、死なせてやりたかった。


『雛菊。よく頑張ったな。』
そう言って頭を撫でてくれた、とても優しい父だったから。


雛菊は……姉の遺体を斬りつけた。 
自分の仕業に見えるように。
そして……厨房にあった酒を屋敷中に撒き………
火をつけて燃やした。

10歳の幼き日、弟と両親が燃えた火のように。



雛菊は、自分の家を燃やした。







ーーーーーー嗚呼、もう疲れた。
ーーーーどうして、俺は………
ーーー幸せになるべき姉を
     こんなふうに刺して。
       姪も、義兄も、不幸にして。
         御伽噺の、英雄のくせに。 
ーーーーーごめんなさい、姉さん。
ーーー俺(狂犬)なんかが弟で、ごめんなさい…

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