第8話

空色のソラ 3. 心結の記憶
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2022/09/19 02:12
ソラ
さぁ、行こう!
善は急げ?って言うし!
志賀野 颯斗しがの はやと
それ、本当に意味分かってるの!?
ソラ
えっと~……
とにかく急げってことでしょ!
志賀野 颯斗しがの はやと
そうじゃないからぁー!!



グイッと俺の手を引っ張って、ソラは走り出す
それも、かなり早いスピードで
そして、突如現れた光に向かって_____




















志賀野 颯斗しがの はやと
(ここは……?)


今日は私の誕生日だ
ずっと楽しみにした、10歳の誕生日





「誕生日おめでとう、心結」
「ほら、パパ達からの誕生日プレゼントだ」




心結みゆ
ありがとう!開けてもいい?



「えぇ、勿論」




紙の包みを開けると、それはクレヨンだった




心結みゆ
クレヨンだー!嬉しい!
パパ、ママ、ありがとう!


私は絵を描くのが大好きだったから
クレヨンを貰った嬉しさはとてつもなかった














志賀野 颯斗しがの はやと
(景色が変わった……!?)


クレヨンを貰った私は、毎日のように絵を描いた


心結みゆ
今日はー……あ!このクレヨン使お!





心結みゆ
今日もよろしくね、「ソラ」!

志賀野 颯斗しがの はやと
( ……!!)





お気に入りの空色のクレヨン
私にとって特別な存在のクレヨン
だから、私は名前をつけた
「空色のクレヨン」で「ソラ」










それから数年経って、私は中学生になった
その頃にはもう、絵なんてすっかり描かなくなってた


心結みゆ
久しぶりに絵でも描こうかな……


でも、クレヨンは忘れずに持っていた
いつでも絵が描けるように




「心結~、ちょっと聞いてよ~!」



突然聞こえた友達の声にドキッとして
思わずクレヨンを鞄の中に突っ込んだ



心結みゆ
な、何?



「由希がさぁ~……」



そんな毎日が続いた








ソラ
……それからしばらくして
心結ちゃんは僕を全く使わなくなった
ソラ
まるで、忘れてしまったかのように
志賀野 颯斗しがの はやと
そんな……一体、どうして……
ソラ
……友達といる方が楽しいんだと思う
志賀野 颯斗しがの はやと
え?
ソラ
……僕らと違って、人は成長する
身体的にも、精神的にも
ソラ
みんな、昔と同じわけじゃない
好きなことも変わっていく
ソラ
絵を描いているより、
友達といる方が楽しいんだよ


ソラは悲しそうな表情で俯き、呟いた


志賀野 颯斗しがの はやと
で、でも!
そうとは限らな……
ソラ
じゃあ何で!!!
何で心結ちゃんは使わなくなったの!?
志賀野 颯斗しがの はやと
ッ……!? (ビクッ)


ソラが今まで出したことのない大声で言った
怒っているような、泣きそうな声


ソラ
僕はただ……ただ……


そのまま、ソラは膝から崩れ落ちた
「何で……」「どうして……」と呟きながら


志賀野 颯斗しがの はやと
ソラ……


何も言えなかった
何故、ソラが使われなくなったのか
考えられる可能性は1つ
心結ちゃんはもう、昔とは違うということ
ソラが言ったように、友達といたいのかもしれない
だとしたら、ソラはもう_____


……待てよ、じゃあ何でクレヨンを学校に……?
それにあの時、「久しぶりに絵でも」って……


志賀野 颯斗しがの はやと
まだ諦めちゃダメだ、ソラ
心結ちゃんはソラを必要としてる!
ソラ
必要と、してる……?
でも、心結ちゃんが僕を最後に
使ったのは、ずっと前のことで……
志賀野 颯斗しがの はやと
だから、何か理由があるのかも!
ソラを使わなくなった理由が!
ソラ
理由……?
志賀野 颯斗しがの はやと
そう!
だから、諦めるのは早いって!
ソラ
颯斗……
ソラ
……分かった、そうだよね
簡単に諦めちゃダメだよね
ソラ
僕、諦めないよ
最後まで、絶対に諦めない


お馴染みのあの笑顔
明るくて優しい、その笑顔が見たかった


ソラ
それじゃあ、探ろう
心結ちゃんが僕を使わなくなった理由を
志賀野 颯斗しがの はやと
うん、行こう


俺達は再び、心結ちゃんの記憶に足を踏み入れた






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