グイッと俺の手を引っ張って、ソラは走り出す
それも、かなり早いスピードで
そして、突如現れた光に向かって_____
今日は私の誕生日だ
ずっと楽しみにした、10歳の誕生日
「誕生日おめでとう、心結」
「ほら、パパ達からの誕生日プレゼントだ」
「えぇ、勿論」
紙の包みを開けると、それはクレヨンだった
私は絵を描くのが大好きだったから
クレヨンを貰った嬉しさはとてつもなかった
クレヨンを貰った私は、毎日のように絵を描いた
お気に入りの空色のクレヨン
私にとって特別な存在のクレヨン
だから、私は名前をつけた
「空色のクレヨン」で「ソラ」
それから数年経って、私は中学生になった
その頃にはもう、絵なんてすっかり描かなくなってた
でも、クレヨンは忘れずに持っていた
いつでも絵が描けるように
「心結~、ちょっと聞いてよ~!」
突然聞こえた友達の声にドキッとして
思わずクレヨンを鞄の中に突っ込んだ
「由希がさぁ~……」
そんな毎日が続いた
ソラは悲しそうな表情で俯き、呟いた
ソラが今まで出したことのない大声で言った
怒っているような、泣きそうな声
そのまま、ソラは膝から崩れ落ちた
「何で……」「どうして……」と呟きながら
何も言えなかった
何故、ソラが使われなくなったのか
考えられる可能性は1つ
心結ちゃんはもう、昔とは違うということ
ソラが言ったように、友達といたいのかもしれない
だとしたら、ソラはもう_____
……待てよ、じゃあ何でクレヨンを学校に……?
それにあの時、「久しぶりに絵でも」って……
お馴染みのあの笑顔
明るくて優しい、その笑顔が見たかった
俺達は再び、心結ちゃんの記憶に足を踏み入れた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!