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第15話

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166
2026/03/05 02:10 更新






夕方。


小さな勉強部屋。


ころちゃんはゆっくりノートに字を書いてる。
るぅとくんは静かに問題を解いている。
莉犬は、えんぴつをくるくる回してる。


静かな時間。

悪くない。


ru
りーぬ、ここちぁう、よ?


るぅとくんが、やわらかく言う。 


ノートをそっと指さす。


責めてない。
怒ってない。


でも。

その瞬間。

胸の奥が、ぎゅっとなる。

ちがう。

その言葉。

ちがう、は、
家ではいつも、次に怒鳴り声が来る合図だった。



「ちがうだろ!!」



机を叩く音。
近づく足音。
逃げ場のない部屋。


rn
……っ


莉犬の手が止まる。

呼吸が浅くなる。 

ころちゃんが気づく。


cl
莉犬くん?


るぅとくんも、はっとする。


ru
え、あの、ちぁうっていう、か…その、けぃさん、が…


必死に言い直そうとする声。


でも、莉犬の耳には、もう別の声が重なってる。


ちがう。
ちがう。
ちがう。
おまえのせいだ。


視界が少しゆらぐ。


rn
おれ、ちゃんとやってるし……


声が、強くなる。


rn
ちゃんとやってるから!!!


ころちゃんがびくっとする。


るぅとくんの目が、少しだけ揺れる。


その顔。
しまった、って思う。


でも止まらない。


強くなきゃ。


怒られる前に、言い返さなきゃ。


cl
莉犬くん、ぼくは怒ってないよ
cl
もちろんるぅとくんも


ころちゃんの声は、小さい。
ゆっくり。

こわれものみたいに。

るぅとくんも、そっと言う。


ru
ぼく、も。ちょっとてつぁおうと、おもったぁけ、だよ


その言葉は、攻撃じゃない。

ただの、やさしさ。


でも、莉犬の体はまだ戦闘態勢のまま。


拳が固い。


ばくばく鳴る心臓。


るぅとくんが、机に手をついて、少し前に出る。


逃げない。
責めない。


ただ、まっすぐ。


ru
り、りーぬ


名前を呼ぶ。 

それだけ。

怒鳴らない。 

低くもない。 

ただの、呼び声。

その音で、少しだけ現実に戻る。

ここはあの家じゃない。

机はひっくり返らない。

誰も殴らない。


ころちゃんが、そっと言う。


cl
ちがうって言われるの、こわい?


その問いは、やさしすぎて。
逃げ場がない。


rn
……


喉がつまる。

言いたくない。

でも。


しゆちゃの言葉が、よぎる。


怖いって言えることかもしれない。


rn
……こわい


小さく。
本当に小さく。
でも、ちゃんと。

るぅとくんの肩の力が抜ける。 


ru
そっか



それだけ。
否定も、分析もない。
ころちゃんが、ゆっくりうなずく。


cl
ぼくも、こわいときあるよ


静かな告白。
対等な位置。
莉犬の拳が、少しゆるむ。


rn
……おれ、さ

rn
ちがうって言われると、怒られる気がして



るぅとくんが首を横に振る


ru
ここでは、おこらない、よ
cl
ぼくも怒らない!


ふたりとも、まっすぐ見る。
逃げない。


rn
……ほんと?



でも莉犬は、ちゃんと子どもだ。
るぅとくんが、小さく笑う。


ru
ほんと!
cl
まちがえても、だいじょうぶ!


その言葉は、やわらかい毛布みたいに落ちてくる。

莉犬の目の奥が、じんわり熱い。

でも今日は。


怒鳴られない。
叩かれない。
追い出されない。


rn
……ありがと



ぽつり。
三人の間に、少しあった緊張が、ほどける。
るぅとくんがノートを指さす。


ru
じゃあ、もういっかい、いこ?
cl
ゆっくりね


莉犬は、鼻をすすって。
少しだけ笑う。




空気が、やわらぐ。


過去はまだ消えない。


音も、言葉も、ふいに刺さる。


でも。


今は、隣にふたりいる。


それだけで。


戦わなくても、いい時間がある。


莉犬は思う。











ひとりで耐えるだけじゃなくて。

隣にいてくれる人を、信じてみるのも、いいのかもしれない。





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