第3話

黄色い人との出会い
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2022/06/20 00:43


入学式が終わり会場の外へ出ると部活の勧誘で人混みになっていた。




母は式の直後、急遽仕事の電話が入ってしまいごめんね、友達作り頑張るのよ!言い残して足速に帰っていった。




友達作りって…この状況でどうやるのよ…
困った顔をしつつ人混みに入っていく



「ねぇ君〜!うちの部入らない〜?女子も多いからきっと楽しいよー!」
「背が高くてスタイルいいね〜!バレーやってたりした?」
「吹奏楽興味ない〜?」
指し出されるチラシとともぐいぐいと勧誘の言葉が投げかけられる。
ありがとうございますとチラシを受け取るだけ受け取ってやんわり断っていった。




作り笑いしすぎたのか、緊張していたのか、それとも張り切って朝早く起きたせいなのか。
人混みに揉まれどんどん気分が悪くなってきた。


あぁ、だめだ一回休もう…
そう思い人混みから脱出し、誰もいない少し離れた建物の陰でしゃがみ込んだ。




あなた『……はぁ。疲れた……』


目眩でくらくらする。
頼れる人も知っている人すらいないしどうしようと思っていると息が苦しくなってきた。


あなた『…はぁ、はぁっ…っ」


どうしよう…なんだか手足も痺れてきた…
入学早々こんなことになるなんて…
焦る気持ちとともに鼓動が速くなっていく。




???「こんなところでどうしたの?」


俯いていると上から声が聞こえてきた。


誰かに見られた恥ずかしさと助けが来た嬉しさ、どんどん苦しくなる呼吸にパニックになっていた。



あなた『…き、気分が悪くなってしまって、、はぁっ息が苦しくてっ…』



???「そうなんだね、大丈夫。まずは落ちついて。  おーい!炭治郎ー!ちょっと袋持ってきてくれ!」



声を掛けてくれた人はじっとあなたの様子を見ると後ろを向いて誰かを呼んでくれた。



申し訳ないとふと顔を上げると、太陽に照らされてキラキラと輝いている黄金色の髪が見えた




…綺麗な髪…。
霞んでいく視界にぼんやり映る映像を眺めていた





炭治郎「善逸、どうしたんだ?!袋ってこれでいいか? ってその子は…!?」


駆けつけてくれた人は心配そうにこちらを見ている



善逸「ありがとう炭治郎!たぶんこの子過換気になってるんだ。袋もらうね」
※過換気症候群=発作的に息苦しくなって呼吸が速くなるような状態。緊張状態やストレスにより起こることがある


そういうと黄色い人はあなたの口元を袋を当て、ゆっくり呼吸をするように言った



善逸「そうそう、ゆっくりだよ。大丈夫」

宥めるように背中を摩りながら優しく言葉を掛けてくれる



炭治郎「俺飲み物持ってくるな!」


善逸「うん、頼んだ」


大丈夫、大丈夫と優しい言葉に身を任せてゆっくり呼吸をしているとだんだんと楽になってきた


あなた『…あ、ありがとうございます、だいぶ楽になってきました…』



善逸「ほんと?よかったぁあ」

黄色い人はすごく嬉しそうににっこり笑った



あなた『あ//あの、えっと在校生の方ですよね?』



先程の心配そうな顔とは裏腹にふにゃっとした笑顔に一瞬きゅんとしてしまったのを隠すように質問をした



善逸「僕は2年の我妻善逸だよ。君は1年生…かな?」



あなた『はい、私は花音あなたといいます。入学式終わってから気分が悪くなってしまって…助けてくださって本当にありがとうございました』



善逸「あなたちゃんか〜!かわいい名前だね!よろしくね〜!」

さっきとはまた違う笑顔でにこにこと笑っていた




炭治郎「よかった、回復したんだな!」

はいこれ、とお水を渡してくれた水を一口飲みふぅと一息ついた。だいぶ楽になってきたかも…。




あなた『ありがとうございます。私は新入生の花音あなたです。お水までいただいて…何から何まですみません』



炭治郎「何も気にすることはないよ。無事で良かった!僕は2年の竈門炭治郎。よろしくねあなたちゃん」



そういうと炭治郎は手を差し出した。
一瞬恥ずかしくなりながらもせっかく差し出してくださったのだからとあなたも手を出し握手をした


あなた『よ、よろしくお願いします//』


炭治郎はにこにこしてうんうんと頷いた



善逸「ちょっとー!なんで炭治郎だけちゃっかりあなたちゃんと握手してんのー!?触っちゃったりしてー!!!」

さっきの様子とは打って変わって善逸は大きな声で握手している手を見ながら叫んだ




炭治郎「触ってるって、、握手じゃないか善逸。いきなり大きい声出すからあなたちゃんびっくりしてるだろう」



あなた『ははは…//』



善逸はもう!炭治郎は…!と言いつつぷりぷり怒っていた



初日から知り合いが出来て嬉しいな…なんて思って2人をもう一度見ると今更気づいた。


あなた『袴…?』


2人とも白の胴着に黒の袴姿だったのだ。




炭治郎「あぁ、俺達弓道部なんだ」

善逸「弓でバシュン!と的に当てるあれね!」

善逸はキランと目を輝かせ自慢げに弓を引くジェスチャーをした



あなた「弓道って、テレビでしか見たことなくて…。ここは弓道部があるんですね」


善逸「やっぱり普通は弓道って聞いてもあんまりピンと来ないよね〜。 あっそうだ!よかったら見てってよ〜!これから部活始まるとこなんだ〜!」



炭治郎もどうかな?とこちらを伺っている。
この後特に予定も無いし、体調もだいぶ良くなった。
それに弓道がどんなものか少し興味あるかも…



あなた『じゃあ…お邪魔じゃないようならぜひ見学させてください』



炭治郎「邪魔なわけないよ。ぜひ寄っていって!」


善逸『そうだよ〜あなたちゃんなら大歓迎!なんなら今日から入部でも「善逸、さすがにそれは早すぎるだろう。無理に誘っちゃだめだ」

すかさずつっこむ炭治郎にと善逸ははぁい…と頬を膨らませた。いいコンビだなぁと思わず微笑んでしまう。



炭治郎「じゃあ早速行こうか!」



あなた『はい!』






【補足】現在の過換気の対応は袋は使用しないですが今回はストーリーの都合上入れました。

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