その騒動から数日後。
薄暗い部屋で、龍人は目を閉じていた。
急に今まで拘束されていた建物から少しボロい建物へと変わり、よくわからない状況が続いていた。
外が、騒がしい。
遠くで、何かが壊れる音。
叫び声。
銃声。
確信に近い感覚。
扉の外で、足音が乱れる。
誰かが叫ぶ。
龍人は、ゆっくりと息を吐いた。
怖い。
でも、それ以上に。
彼は拘束されて動かしにくい中、震える手でこの数日間でできた殴られた後や刺され続けた注射痕をなでた。
龍人は目を閉じたまま、呼吸の回数を数えていた。
痛みは、もう新しいものじゃない。身体のあちこちに残る鈍い感覚も、今さら驚くほどじゃなかった。
――でも。
外の音が、明らかに違う。
今まで聞こえていたのは、一定のリズムだった。足音、扉の開閉、短い命令。
それが今は、乱れている。叫び声が重なり、何かを引きずる音がして、誰かが怒鳴っている。
聞き覚えのない声。
緋蜘蛛の構成員だ。少なくとも、ここ数日龍人の前に出てきた連中じゃない。
その言葉に、龍人の胸がわずかに跳ねた。
――上が、潰された。
確信が、形になる。
拘束された手首に力を入れる。動かない。それでも、指先だけはまだ感覚がある。
震えは止まらないが、それは恐怖だけじゃなかった。
――来てる。
扉の向こうで、何かが倒れる音。
短く、乾いた銃声。
続いて、重たい音が床を叩いた。
静寂。
数秒。あるいは、もっと短かったかもしれない。
低く、落ち着いた声。
聞き間違えるはずがなかった。
声に出した途端、喉がひっかかる。情けないほど掠れていた。
扉が開く。
逆光の中に立っていたのは、中村旺太郎だった。刀は下げられその刀から血が垂れる。けれど、表情には安堵と高揚が込められていた。
その背後に、見慣れた影が次々と現れた。
千田波空斗が駆け寄り、すぐに拘束具を確認する。
筒井俊旭が周囲を確認しながら言う。
龍人は力が抜けたように息を吐いた。
世梛が、しゃがみ込んで視線を合わせる。
声はいつも通り、元気で。しかし、穏やかだった。
龍人が掠れた声で呟けば
温世と李玖が頭を撫でる。
八神遼介も後ろから言う。
その軽口に、龍人の目が少し潤む。
旺太郎はそれだけ言って、上着を脱ぎ、龍人の肩にかけた。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。