…あれから数週間が過ぎた。
相変わらずツルはそばにいてくれる。
嬉しい限りだ。
顔を赤らめ布団に伏せるツル。
自分で言って自分で照れるとか…。
…。
暇な時はずっとツルと話したり、
しりとりをする。
そのせいか、だいぶ仲は深まっていた。
その瞬間だった。
後ろから声がした。
突然過ぎてビクリと体を震わせ振り返った。
そう言い、奈央がカバンから取り出したのは…
八つ橋というのは京都の名物として有名な駄菓子だ。
…三角形の皮であんこを包んで食べる。
目を背ける奈央。
しかしきっと八つ橋を選んでここに持ってきたのは訳がある。
俺の大好物は八つ橋だからだ。
狙ってるのか。
なんだなんだ!?
なんか怖くなってくるんだが。
そういえば、そんなことも話したな。
その瞬間、ツルの目の色が変わった。
堪忍袋の尾に触れるとはこのことか。
ぽこぽことツルは奈央を軽く叩いていた。
…俺は顔を真っ赤にそう叫んだ。
久々の再会にこんなに騒つくとは思いもしなかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!